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 ミスリード
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「ブリーダーを打擲(ちょうちゃく)するんじゃ」と隊長が言った。
 開高(かいこう)充(みつる)は、「チョウチャク」という言葉を理解できずに戸惑った。だが、隊長が続いて、「ボコボコにしても構わんが、重体にしてはならん」と言ったので、暴行を加えるというほどの意味だと推測した。
「昌光(まさみつ)隊長、重体いうんは具体的にどの程度ですか」
 岩代(いわしろ)雄大(ゆうだい)が甲高い声で訊く。
「骨の一本や二本は折っても構わんが、意識不明に至るような怪我を負わせるなということよ」
「なぁんじゃ。骨はOKね。了解了解」と岩代。
「急所を狙わんかったらいいんでしょ?」
 高梨里佳(たかなしりか)が素っ気なく言う。
「まぁ、そういうことじゃ。だが、あくまでワンちゃんの保護が最優先ということを忘れるな。ええな」
 昌光は念を押して、黒い目出し帽を被った。そのせいで鋭い眼光と胡坐をかいた鼻、への字に曲がった口が強調される。
 昌光が隊長と呼ばれているのは便宜的なものだろうと開高は思っていた。プライベートアニマルポリス、略してPAPは非公然活動団体だからだ。とはいえ、人間が二人以上集まれば誰に主導権があるのかはっきりさせておかないと現場が混乱する。組織の鉄則だ。その点で昌光(まさみつ)大(まさる)は指揮官として申し分ないように思われた。元警察官で、柔剣道共に段位を持っているらしい。ちなみに岩代はプロボクサーのライセンスを持っている会社員。里佳は空手四段で、フィットネスクラブに勤務しているという。
 その三人に、開高を加えた四人がハイエースの後部座席に座って襲撃開始予定時刻を待っていた。
 開高にとって、今日は初めての実戦だった。作戦規模は中程度だが、NPO法人ラブペットとの連携作戦であるから、気は抜けない。いざとなったら体を張って、非戦闘員を逃がさなくてはならなかった。
 しかし、なぜ俺が、という思いを開高は捨てきれずにいた。普段なら今頃は自宅で犬や猫に囲まれて、晩酌している時間だった。