オーバートレーニング症候群とは? 権田修一選手、藤田のぞみ選手が発症
1月16日、浦和レッズレディースの藤田のぞみ選手が引退したという報道がありました。
オーバートレーニング症候群という病気が原因だということです。
サッカーファンは、FC東京(当時)の権田修一選手がかかったことで知っている方もいらっしゃると思います。
オーバートレーニング症候群は真面目な人ほどかかりやすいとも言われる病気です。
目次
オーバートレーニング症候群とは
直接の原因は過度な運動によるストレスです。
トレーニングは通常、過負荷(オーバーロード)の原理に基づいています。
それは『負荷をかけてトレーニングをし、身体が回復すると以前より体力が向上する』というものです。
その回復の過程で更に大きな負荷をかけることで、継続的に効果を上げるというのが一般的なトレーニング理論です。
しかし、不十分な回復状態の段階で、連続してトレーニングを繰り返すと、効果が半減するどころか逆効果になります。
それが恒常化すると、オーバートレーニング症候群を引き起こすことになります。
主な原因
・過度な運動負荷
・急激な運動量の増加
・休養不足、睡眠不足
・栄養不足
主な症状
・慢性的な疲労感
・呼吸数の増加
・運動効率の低下
・体重減少
・運動時血中乳酸の増加
・喉の渇き
・食欲の減退
・安静・運動・回復時の心拍数の変化
・臥位と立位時の心拍数の差の拡大
・基礎体温の上昇
・不眠
・立ちくらみ
・恒常的な気持ちのいらだち、不安感
・抑うつ状態
オーバートレーニング症候群の診断方法
前項のような著しい身体の不調を感じたら、医師の診断を受けてください。
ただし、診断が難しい病気ですので、正式にオーバートレーニング症候群という診断を下すには、現在ではCPXという心肺運動負荷試験を行う必要があるそうです。
これは血圧、心電図、呼吸中の酸素と二酸化炭素の濃度を計測しながら、自転車漕ぎをするものです。
ですから、専門医がいて設備が整っている病院で受けてください。
また、心理的プロフィールテスト(POMS)・心理的競技能力診断検査(DIPCA3)・体協競技意欲検査(TSMI)のような心理テストもチェック方法として有効と考えられています。
オーバートレーニング症候群にならないために
何より予防が大事です。
オーバートレーニング症候群の前段階として、オーバーリーチングと呼ばれる状態があります。
パフォーマンスが十分に発揮できない状態ですが、短期間(2~3日、長くても1~2週間)でこの状態は改善するそうです。
このオーバーリーチングの時点で、短期の休養をとることが大切です。
しかし、自分では判断がつきにくいですし、真面目な人ほど、そういったときに無理しやすいので休養をとるのはなかなか難しいのかもしれません。
以下の項目を普段から心がけてください。
・適切な運動と栄養・休養をとる
・トレーニング日誌をつける
日誌に以下のような項目を書き込むことで、自分の身体(と心)がどういう状態かがわかるようになります。
トレーニングの質と量の変化、達成度、体重や体温の変化、安静時心拍数の違い、睡眠の質と時間、トレーニングへの意欲、自分の今の精神状態など
・積極的休養をとる
トレーニングをしない完全休養に加え、軽いジョギングや水中でのウォーキング、ストレッチなどで筋肉をほぐしたり、血行を良くしたりすることで疲労回復を促進させることも大事です。
慢性疲労症候群(CFS)
簡単に説明すると、慢性疲労症候群(CFS)は、『原因不明の疲労、倦怠感が6か月以上続く』病気です。
症状としては、うつ病にも似ていますが、最近の研究では、『脳内の炎症が原因』なのではないかという研究結果が出ています。
また、慢性疲労症候群の患者の脳内では、血流の低下やセロトニン輸送体密度の低下が確認されているようです。
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オーバートレーニング症候群と慢性疲労症候群(CFS)は同義か
臨床的には同義であると言われているそうです。
症状が似通っているところもあるので、同一視されやすいかもしれませんが、厳密には違うようです。
慢性疲労症候群の定義は『感染症や過度の生活ストレスなど複合的な要因が引き金になり、「疲れが取れない」という状態に脳が陥る』とされています。
そのことから、オーバートレーニング症候群は、慢性疲労症候群(CFS)に含まれるのではないかという指摘もあります。
こちらのサイトに詳しく症例が載っています。
オーバートレーニング症候群で休養したアスリートたち
サッカー選手に多い印象ですが、それは日本でも有数の人気スポーツであるため、報道が多いからだと思います。
海外ではマラソン選手などにも多いようですが、日本ではあまり報道で見たことはありません。
サッカーもマラソンも持久力が求められるスポーツです。
ということは、持久力が求められるバスケットボールやテニス、ラグビーなどのスポーツでも調べてみたらありそうですね。
僕が調べた限りではサッカー選手ばかりでした。
大久保嘉人
所属:セレッソ大阪 ~ RCDマヨルカ ~ ヴィッセル神戸 ~ ヴォルフスブルク ~ ヴィッセル神戸 ~ 川崎フロンターレ
2013、14、15と三年連続得点王という偉業を成し遂げた大久保選手も、2010年南アフリカワールドカップ後にオーバートレーニング症候群を発症しました。
一時は全身の強い倦怠感に悩まされ、ボールを蹴ることはおろか、走ることもできなくなったそうです。
森崎和幸
所属:サンフレッチェ広島
2006年にオーバートレーニング症候群を発症。数ヶ月の離脱。
また森崎和幸選手は、慢性疲労症候群(CFS)にかかり、2009年の5月12日から9月18日まで完全休養をとっています。
次項の森崎浩司選手は双子の弟。
森崎浩司
所属:サンフレッチェ広島
2008年末に症状が出始め、2009年1月28日に公式発表。
2009年8月チームに合流し、11月に実戦復帰
完治するのに5年かかったそうです。
また、森崎浩司選手は2002年から年代別代表とリーグ戦で厳しい日程が続いたせいで、2005年にバーンアウト(燃え尽き)症候群にもかかっています。
前項の森崎和幸選手は双子の兄。
権田修一
所属:FC東京~SVホルン
各世代代表を経験し、AFC U-19ワールドカップアジア予選では主将を務め、ロンドンオリンピックの日本代表(U-23)で正GKを務め、チームのベスト4入りに貢献しました。
2015年7月にオーバートレーニング症候群を発症しました。
休養を経て、2016年1月9日に、本田圭佑選手が実質的なオーナーをしているSVホルンに期限付き移籍しています。
環境を変えることで、症状が改善するといいですね。
市川大祐
所属:清水エスパルス~ヴァンフォーレ甲府~水戸ホーリーホック~藤枝MYFC~FC今治~ヴァンラーレ八戸
17歳でJリーグデビューし、17歳322日(史上最年少記録)で日本代表にデビュー。
2002年W杯に出場。
しかし、99年に発症したオーバートレーニング症候群に悩まされたそうです。
オーバートレーニング症候群になった原因としてはリーグ戦、ユース、五輪代表、A代表を掛け持ちしたためだとされています。
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オーバートレーニング症候群が疑われた選手
情報が錯綜していますが、内田篤人選手の症状はどうやらオーバートレーニング症候群だと確定はしなかったようです。
内田篤人
所属:鹿島アントラーズ ~ シャルケ04
言わずと知れた日本代表、不動の右サイドバックです。(現在は右膝の怪我のため離脱中)
高卒ルーキーで名門、鹿島アントラーズのレギュラーポジションを獲得し、その後リーグ三連覇に貢献。
ドイツブンデスリーガ、シャルケ04移籍後はチャンピオンズリーグでベスト4入りするなど活躍しています。
2006年、オーバートレーニング症候群ではないかという報道がされました。
2009年4月22日のアジア・チャンピオンズリーグ、アームド・フォーシズ(シンガポール)戦でおう吐するも、このときも『疲労・ストレスからくる胃炎』という診断でした。
2010年1月の日本代表合宿でも、練習試合中におう吐し、途中交代。このときも原因不明の体調不良という診断です。
オーバートレーニング症候群で引退したアスリート
症状の回復が見られず、引退したアスリートもいます。
藤田のぞみ
所属:浦和レッズレディース
2012年、日本で開催されたU-20女子W杯で主将を務め、史上初の銅メダル獲得に大きく貢献しました。
なでしこジャパンの現監督佐々木則夫氏が藤田選手を見出し、U-16代表に呼んだのは有名な話です。
152cmという小柄ながら足元の技術に優れ、視野も広く、現代表の宮間あや選手の後継者とも呼ばれていました。
2014年7月頃に発症、一旦回復するも2015年の5月に再び発症し、長期離脱。
2016年1月16日、クラブ(浦和レッズレディース)から正式に発表し、23歳という若さで引退しました。
海外ではオーバートレーニング症候群を発症したアスリートの多くが引退しているそうですから、深刻な病気ですね。
ストイックで真面目な選手ほどかかりやすいとも言われますから、何とも皮肉な病気です。
本職のアスリートのみならず、普段からハードなトレーニングをされている方は気をつけてください。
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