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ミステリー小説を書くときに押さえておきたい『ノックスの十戒』『ヴァン・ダインの二十則』『チャンドラーの九命題』

 

以前、ハードボイルド論とオススメの小説 ~ハードボイルドとは?~という記事を書いた。

ハードボイルドとは?

【私見】ハードボイルド論とオススメの小説 ~ハードボイルドとは?~【書介】

エンターテイメント系の小説を書く人間にとって、ハードボイルド(小説)の手法は避けては通れない道だと個人的には思っている。
何を隠そう、この僕、いや『杉成就』という作家はハードボイルド小説の影響を色濃く受けている。

 

その中で、『ハードボイルド小説はミステリーの一分野である』ということを述べた。

では、ミステリーとは何かと言われると、これは解釈が分かれるところなので、実は説明が難しい。

 

しかし、あえて言うならば、ミステリーとは『不思議なことが起こる小説』のことだ。

だから、必ずしも事件が起こる必要はない。

怪奇小説や幻想小説もミステリーということになるし、言葉の元々の意味からいうと、ホラーやSFもミステリーに含まれる。

 

まあ、この辺の話はややこしくなるので措いておく。(いずれじっくり解説したいと思う)

 

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ミステリー小説を書くときに押さえておきたい原則とは

で、何が言いたいかというと、ミステリー小説を書くときに押さえておきたい原則のことだ。

ミステリー小説の中でも『本格派推理小説』というジャンルを書きたい人はこの原則論を避けては通れない。

(本格派という言葉に反発したくなるのはハードボイルド小説好きあるあるw)

 

自由に書いているように見えて、実はミステリー小説にも守るべき原則というものがある。

それが、『ノックスの十戒』『ヴァン・ダインの二十則』だ。

 

とはいえ、これを提唱したノックスヴァン・ダインですら、自身の作品の中でそれらを破っていることがある。

だから、あくまで原則なのだが、知っていてそれを破るのと、知らずに破るのでは大きな違いがある。

 

ミステリー小説執筆(予定)者の方々には、是非とも押さえておいていただきたい。

 

『ノックスの十戒』と『ヴァン・ダインの二十則』以外にも

『ノックスの十戒』と『ヴァン・ダインの二十則』の二つを再度確認しようと思い、ネット検索していると、『チャンドラーの九命題』というものが出てきた。

チャンドラーはハードボイルド小説御三家の一人なので、探偵小説を書くときの覚書のようなものだ。

 

と、ここで気づいたのだが、僕の記憶では9つではなかった

そこで原文(と思しきもの)に当たってみると、やはり12のセンテンスがあった。

しかし、別のところでは10になっているので、これもまたよくわからない。

 

その謎は面倒だったので調べていないし、僕が別のものを見ているのかもしれない(とはいえ、内容は近い)ので、12の覚書の方を勝手に翻訳して併記した。

(知っていたら誰か教えてください)

英語力に疑問符が大量につく僕が翻訳した箇所に関しては、誤訳御免でお願いする。

 

前置きが長くなったが、どうぞ。

 

ノックスの十戒

1. 犯人は物語の当初に登場していなければならない
2. 探偵方法に超自然能力を用いてはならない
3. 犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない(一つ以上、とするのは誤訳)
4. 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
5. 中国人を登場させてはならない()
6. 探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない
7. 変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない
8. 探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない
9. “ワトスン役”は自分の判断を全て読者に知らせねばならない
10.  双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない

これは少し説明が必要で、ここにおける中国人とは『万能の怪人』のことを指す。
どういう意味かというと、当時有名だった、フー・マンチューという(創作上の)人物を示している。
こういった、『何でもアリ』、『何でもできる』人間を登場させるのは創作上、フェアではないからという意味ととれる。

フー・マンチュー博士(Dr.Fu Manchu, 傅満洲博士)は、イギリスの作家サックス・ローマーが創造した架空の中国人。
西欧による支配体制の破壊を目指して陰謀をめぐらす悪人であり、東洋人による世界征服の野望を持つ怪人である。
単行本の第1作「ドクター・フー・マンチューの秘密」によると、フー・マンチューは北京の漢方医であったが、義和団の鎮圧にあたった西欧列強軍によって妻子を殺され、白人への復讐と、世界征覇の野望に燃える冷酷な殺人鬼と化したとされる。

wikipediaより抜粋

 

ヴァン・ダインの二十則

1.  事件の謎を解く手がかりは、全て明白に記述されていなくてはならない。

2.  作中の人物が仕掛けるトリック以外に、作者が読者をペテンにかけるような記述をしてはいけない。

3.  不必要なラブロマンスを付け加えて知的な物語の展開を混乱させてはいけない。ミステリーの課題は、あくまで犯人を正義の庭に引き出す事であり、恋に悩む男女を結婚の祭壇に導くことではない。

4.  探偵自身、あるいは捜査員の一人が突然犯人に急変してはいけない。これは恥知らずのペテンである。

5.  論理的な推理によって犯人を決定しなければならない。偶然や暗合、動機のない自供によって事件を解決してはいけない。

6.  探偵小説には、必ず探偵役が登場して、その人物の捜査と一貫した推理によって事件を解決しなければならない。

7.  長編小説には死体が絶対に必要である。殺人より軽い犯罪では読者の興味を持続できない。

8.  占いとか心霊術、読心術などで犯罪の真相を告げてはならない。

9.  探偵役は一人が望ましい。ひとつの事件に複数の探偵が協力し合って解決するのは推理の脈絡を分断するばかりでなく、読者に対して公平を欠く。それはまるで読者をリレーチームと競争させるようなものである。

10.  犯人は物語の中で重要な役を演ずる人物でなくてはならない。最後の章でひょっこり登場した人物に罪を着せるのは、その作者の無能を告白するようなものである。

11.  端役の使用人等を犯人にするのは安易な解決策である。その程度の人物が犯す犯罪ならわざわざ本に書くほどの事はない。

12.  いくつ殺人事件があっても、真の犯人は一人でなければならない。但し端役の共犯者がいてもよい。

13.  冒険小説やスパイ小説なら構わないが、探偵小説では秘密結社やマフィアなどの組織に属する人物を犯人にしてはいけない。彼らは非合法な組織の保護を受けられるのでアンフェアである。

14.  殺人の方法と、それを探偵する手段は合理的で、しかも科学的であること。空想科学的であってはいけない。例えば毒殺の場合なら、未知の毒物を使ってはいけない。

15.  事件の真相を説く手がかりは、最後の章で探偵が犯人を指摘する前に、作者がスポーツマンシップと誠実さをもって、全て読者に提示しておかなければならない。

16.  よけいな情景描写や、わき道にそれた文学的な饒舌は省くべきである。

17.  プロの犯罪者を犯人にするのは避けること。それらは警察が日ごろ取り扱う仕事である。真に魅力ある犯罪はアマチュアによって行われる。

18.  事件の結末を事故死とか自殺で片付けてはいけない。こんな竜頭蛇尾は読者をペテンにかけるものだ。

19.  犯罪の動機は個人的なものがよい。国際的な陰謀とか政治的な動機はスパイ小説に属する。

20.  自尊心(プライド)のある作家なら、次のような手法は避けるべきである。これらは既に使い古された陳腐なものである。
  ・犯行現場に残されたタバコの吸殻と、容疑者が吸っているタバコを比べて犯人を決める方法
  ・インチキな降霊術で犯人を脅して自供させる
  ・指紋の偽造トリック
  ・替え玉によるアリバイ工作
  ・番犬が吠えなかったので犯人はその犬に馴染みのあるものだったとわかる
  ・双子の替え玉トリック
  ・皮下注射や即死する毒薬の使用
  ・警官が踏み込んだ後での密室殺人
  ・言葉の連想テストで犯人を指摘すること
  ・土壇場で探偵があっさり暗号を解読して、事件の謎を解く方法

 

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チャンドラーの九命題

1. 初めの状況と結末は納得できる理由が必要。
2. 殺人と操作方法の技術的な誤りは許されない。
3. 登場人物、作品の枠組み、雰囲気は現実的たるべし。
4. 作品の筋は緻密につくられ、かつ物語としてのおもしろさが必要。
5. 作品の構造は単純に(最後の説明が誰にもわかるように)。
6. 解決は必然的かつ実現可能なものに。
7. 謎解きか暴力的冒険談かどちらかに。
8. 犯人は罰を受けねばならない。
9. 読者に対してはフェアプレイを(データを隠してはならぬ)。

 

以下は、僕の拙い日本語訳なので、参考程度に。

冒頭でも述べたが、これは英語文書にあたったところ、覚書が十二のセンテンスに分かれていたのでそれを訳したもの。

チャンドラー12の覚書(僕が勝手につけたw)

1.  説得力のある動機が必要
2. 殺人と捜査は技術的に確かなものでなければならない
3. 読者に対して誠実でなければならない。
4. 登場人物と設定、雰囲気にリアリティーがなければならない
5. ミステリー要素とは別に、ストーリーがしっかりとしたもので読むに値する冒険談でなければならない
6. 前項を達成するために、サスペンスの形式を保ってなければならない。(それは必ずしも探偵が死に直面するような脅威でなければならないということではない)
7. その作品特有の持ち味、感情の高潮、ほどよい筆勢(勢い)がなければならない
8. (事件)解決は理解できるようなシンプルなものでなければならない。
9. 理性と知性を持った読者を困惑させるものでなければならない
10. 解決は明らかになるのが避けられないように見えなければならない(つまり、合理的な解決が必要だということ)
11. より良い謎解き話であることと、暴力的な冒険談を両立させようとしてはならない
12. 犯罪者は罰を受けなければならない(それは必ずしも法の裁きでなくてもよい)

 

参考
http://gadetection.pbworks.com/w/page/7931263/Notes%20on%20the%20Detective%20Story%20by%20Raymond%20Chandler

最後に

アガサ・クリスティーが『アクロイド殺し』で使って、当時大きな論争を呼んだ叙述トリックに関しては、『ヴァン・ダインの二十則』『チャンドラーの九命題』を思いっきり破っている。

とはいえ、叙述トリックは近年でも一時的に流行したこともあり、一つのジャンルのようになりつつあるので、破った中でも成功例と言える。

 

探偵役と共に謎解きを楽しみたい人たちにとっては不親切極まりないと言える書き方だけど、僕は否定しない。

その理由を書くと、また長くなるので、ここでは割愛する。

 

 

ミステリー小説執筆者の皆さんが良い作品を書かれることを心より祈って本項の締めとさせていただく。

是非、僕のような四流小説家を嫉妬させる物語を編んでください。

 

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