【入門編決定版】独断で選ぶ国内ハードボイルド小説おすすめ8選+作家紹介+α【書介】
最初に言っておきます。
長いです。(すみません)
でも、読んで損はないはずです。
というか、是非読んでください。お願いします。<(_ _)>
※前置きが長いので、読むのが面倒な方は下の目次から一気に本題へ飛んでください。
目次
【序文に代えて】日本国内におけるハードボイルド小説とは
以前、この記事で、本来の意味でのハードボイルド(とハードボイルド小説)の厳密な定義をしました。
その(アメリカ本国における)定義は間違っていないと思います。
しかし、こと国内ハードボイルド小説となると、若干様相が違ってきます。
というのも、ハードボイルド小説は戦後に輸入され、日本国内では1950年代から書かれ始めたからです。
つまり、1920~30年代に確立し、その後発展してきた本場のハードボイルド小説が一気に日本に押し寄せてきたということになります。
ですから、少しアメリカとは様相が違ってきます。
また、
『西部開拓精神を内に宿した主人公(多くは探偵)がアメリカ社会の諸問題に立ち向かう物語』
というハードボイルド小説の図式は、日本においては成り立ちません。
国が違うから当然ですね。
それらを根本として押さえていただいた上で、日本国内のハードボイルドを見てみると、少し理解が進むと思います。
ハードボイルドとは『自分と約束し、それを頑なに守る姿勢、態度』
日本国内では、一般にハードボイルド作家と言われている国内の作家のほとんどが、元々自分をハードボイルド作家と考えていません。
誤解を恐れずに言うと、冒険小説やアクション小説の一つとしてハードボイルド風の作品を書いていたわけです。
つまり、それらの作家たちをハードボイルドで括るというのは無理があるというか、ある意味乱暴です。
しかし、それを言ってしまってはこの記事が成り立ちません。
ですので、日本におけるハードボイルドを現在の意味で捉えなおして、強引に括ります。
日本におけるハードボイルドとは、
『自分と約束し、それを頑なに守る姿勢、態度』
のことだと勝手に定義づけます。
傍から見ると、やせ我慢をしていたり、意味不明な言動や行動をとったりしていますが、それは彼らが自分の中に確立した譲れない尺度を持っているからです。
その意味で言うと、職業は探偵でなくてもいいし、性別は男でなくてもいいわけです。
少し幅が広くなりますが、ハードボイルドとはそういうものだと思って、以下をお読みください。
注意書き
◆入門編なので、有名なものばかりです。
マニアックな方、『あれが入ってねーぞ』という声があると思いますが、ごめんなさい。
◆『+α』と言いながら、αの部分が多いです。スミマセン。
◆ネタバレ防止のため、内容にはあまり踏み込んでいません。
◆シリーズ物は基本的に第一作を挙げています。
理由は単純で、僕自身が時系列(作品内の、ではなく発表順)に沿って読まないと気が済まないタイプだからです。(笑)
真面目な話をすると、第一作はその作品や作家の良さ悪さが如実に出るとか、シリーズの方向性を決定づけるエピソードやキャラクターが出てくるので必読だとか、そういうこともあります。
なお、記事タイトルにある書介は造語です。
詳しくはコチラ。
では、本文をご覧ください。
大藪春彦 【蘇える金狼 野望篇】
日本ハードボイルドと言えば、大藪先生の名前が最初の方に出てくるべきでしょう。
僕は一読して、ミッキー・スピレーンを想起しましたが、実際、大藪先生はダシール・ハメットやミッキー・スピレーンの作品が好きだったようです。
ですから、ときに度が過ぎるくらい暴力的なシーンがあり、その内容からしてノワール(暗黒小説)やピカレスク(悪漢)小説と言うべきかもしれません。
ですが、一般的にはハードボイルドとされているので、それに倣います。
大藪先生にはいまだに熱狂的なファンというか、マニアがいるということからも、その影響の度合いが知れると思います。
また、専門家の間でも高く評価されていることは、大藪先生の名を冠した『大藪春彦賞』という文学賞があることからもわかりますよね。
(大藪春彦賞・・・ハードボイルド小説、冒険小説が選考対象)
大藪作品のほとんどが、ストーリーはシンプルです。
一匹狼でストイック、反権力的な志向を持つ主人公が出てきます。
で、特筆すべきは、銃器に関する過剰ともとれる描写です。
そこまで書くかというくらいこだわりを持って描かれます。
実際、大藪先生は海外に行っては拳銃を撃ちまくっていたらしく、それが高じてか拳銃不法所持で逮捕されたこともあります。
さて、【蘇える金狼】ですが、ミステリー要素はありません。
主人公の朝倉哲也が自らの野望のために、ひたすら突き進むという内容です。
派手な立ち回りを演じながらも、ちょっと詰めが甘いというか、計画が杜撰なところがこの作品を味わい深いものにしています。
ちなみに、1979年に松田優作さん主演で映画になっていますが、ラストが違います。(ネタバレ防止のため詳細は省きます)
あと、若いころの風吹ジュンさんがめちゃくちゃ可愛いし、色っぽいです。(笑)
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他のオススメ作品
デビュー作となった【野獣死すべし】の主人公、伊達邦彦シリーズがオススメです。
また、個人的には、【ヘッドハンター】が好きですが、これは大藪マニアもしくは、文章のイメージ喚起力を重視する方にしかオススメしません。
なぜならばストーリーらしきものがなく、主人公の杉田がひたすら狩りをするという内容だからです。
ディテールが細かすぎる点も、一般の人は受け付けないでしょうね。
村上龍先生の【愛と幻想のファシズム】にも狩りをするシーンが出てきましたが、あれの百倍は細かいです。(笑)
矢作俊彦 【マイク・ハマーへ伝言】
17歳のときに漫画家デビューした後、映画監督を目指して京都撮影所で働いたという異色の経歴を持った作家さんです。
(馬券をめぐり、勝新太郎さんに怒鳴られてやめたという逸話があります)
矢作先生の作品で外せないのが、【AKIRA】の大友克洋先生との共作コミック、【気分はもう戦争】です。
僕は掛け値なしにオモロイと思うのですが、大学生だった当時に友人に読ませると、さして反応が得られなかったので読む人を選ぶようです。
で、話を元に戻して、紹介したいのは【マイク・ハマーへ伝言】です。
ストーリーとしては単純であり、初読時に映画的だなという印象を受けました。
(後で、矢作先生の経歴を知って納得したのは言うまでもありません)
バイオレンス系の作品ではなく、銃撃戦があるわけでも派手な立ち回りがあるわけでもありません。
(実際、矢作先生ご本人はマイク・ハマーへ伝言をハードボイルド小説ではなく、青春小説だととらえているそうです)
この作品の魅力は、世界観と文章にあると思います。
であるがゆえに、この作品は人を選ぶと思います。
これは矢作作品全般に言えるのではないでしょうか。
(とはいえ、実は僕、矢作先生の作品を全て読んでいるわけではありません。スミマセン)
この記事を書くにあたって読み返してみましたが、カーチェイスの場面は未だに覚えているほど、鮮烈なものでした。
注釈を加えておくと、マイク・ハマーというのは、元々、アメリカのハードボイルド作家、ミッキー・スピレインの代表作、マイク・ハマーシリーズからきています。
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他のオススメ作品
刑事でありながら、私立探偵のような立場で事件に携わる二村刑事シリーズの第一作【リンゴォ・キッドの休日】がオススメです。
いや、むしろハードボイルドの入門書として考えるなら、こっちではないかと思うんですが、先に【マイク・ハマーへ伝言】を紹介してしまったので仕方ありません。
ちなみに、二村刑事シリーズは最新作が【フィルムノワール/黒色影片】ですが、最初の作品が出てから約40年経っています。
(【リンゴォ・キッドの休日】は1978年刊行です)
また、ハードボイルド小説と言えるかどうか怪しいのですが、【あ・じゃ・ぱん】はスゴイです。
掛け値なしの傑作です。
作家として、こういう大掛かりな小説を書けたら楽しいだろうなと個人的には思います。
戦後日本の偽史ものなので、興味ない人にとっては意味がわからないはずです。
そういう理由で好き嫌いが別れるので、参考までに。
生島治郎 【上海無宿】
実は僕、生島先生について、あまり詳しくありません。
ですので、作品だけを紹介したいと思います。
といっても、矢作先生と同じく、生島先生の作品群も網羅したとは言い難い程度しか読んでいません。すみません。
その限られた中から紹介したいのが、【上海無宿】です。
第二次大戦中の1938年、当時、魔都と呼ばれた上海における物語群(短編集:6編)です。
上海在住歴15年の私立探偵、林が主人公です。
児島機関(児玉機関がモデルだと思います)や満州、関東軍という当時を表現する言葉が出てくるだけで、日本の近現代史が好きな僕としてはワクワクしてしまいます。
本作には関係ありませんが、当時の上海を舞台にしたもので一般によく知られているのは漫画、北斗の拳シリーズの【蒼天の拳】が有名ですね。
その辺から雰囲気を思い浮かべてみるのもいいですが、そんなことをする必要がないくらい生島先生の文章にはイメージ喚起力があります。
生島先生は上海生まれ(1933年生誕)で、12歳まで現地で過ごしたそうですから実際に当時の空気を知っているわけです。
それを知って、読み返してみると説得力がより増しますね。
他のオススメ作品
第57回直木賞を受賞した、【追いつめる】や【黄土の奔流】、または兇悪シリーズがオススメです。
【黄土の奔流】も上海を舞台としています。ハードボイルドというよりは冒険小説的な色の濃い作品です。
また、兇悪シリーズは1970年代に放送されたドラマ【非情のライセンス】の原作です。
(僕は非情のライセンスをちゃんと見たことありません)
生島先生の作品については、これ以外あまり読んでいません。すみません。
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