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HM小説、第一話~三十路、偉そうなあいつからの依頼~

HM(ハードボイルドマーケティング)小説、第一話~三十路、偉そうなあいつからの依頼~

ロックウィスキー
By: Dominick

 

本作品はフィクションです。

Section01 ファーストビューはいつも3秒で

「他を当たりな」
杉が言って、グラスを傾けた。

 

飲んでるのはいつものバーボン。
ケンタッキー産のキツイやつだ。

奴は一杯目に必ずそれを生のままやる。
そして、それを飲み終えるまで一言も喋らない。

 

それを知らない輩が話しかけると、さっきみたいに追い払われることになる。

「良かったんか? 仕事の依頼やろ。あいつはあんたが現れるのを一時間も前から待ってた」
俺は杉がグラスを空にするのを待って、話しかけた。

「ああ、いいんだ、三十路。別に仕事に困ってるわけじゃねぇ」
杉がこちらを横目に見やって言う。

「なら、ええけど」
俺はドライマティーニを干した。

 

『BAR SEO』。
大阪ミナミの外れ、駅からもさほど近くないせいで、客は多くない。

サッチモが、しゃがれ声で世界を素晴らしいと歌い、俺はそれに空のグラスを掲げて賛同した。

 

「おい、杉」
飲み干したグラスを置いて、俺は言った。

「なんだ?」

「あんた、最近、マーケティングコンサルタントを名乗ってるらしいな」

「縁があって、な」

「仕事、回したろうか」

「どうした、珍しいな、三十路。あんたがそんなこと言うなんて」

杉がこちらを向いた。
相変わらずの寝不足らしく、目の下に濃い隈ができている。

 

「俺は最近、倦んでんねん」

俺はバーテンに同じものを注文した。

「ほう?」

「SEOだのリスティングだの、やる前から結果が見えてる仕事ばっかりや」

事実、会社での仕事が生温くて仕方なかった。

いつも同じことの繰り返し。惰性と慢心が職場を覆っているのに嫌気が差していた。

 

「つまらない、ってか。贅沢な悩みだな。その仕事が欲しくて犬みたいに駆けずり回ってる連中がいるってぇのに、よ」

「連中には美学がない。俺にはそれがある。その違いや」

「それだけか?」

「それだけ、や」
言って、俺はバーテンからドライマティーニを受け取った。

 

「残念だな、三十路」
杉がカウンターテーブルに置いたグラスを揺らしながら言った。

「何が、や?」

「あんたに、仕事を頼みたかったんだが」

「あんたが俺に、か? 珍しいこともあるもんやな」

「正確に言うと、俺のクライアントからの紹介だ」
杉が声を低めて言った。

「あんたがやったらどないや、杉」

「それが、ちょっとヤバい案件で、な」

「あんたらしくないな、びびってんのか?」

もう少し茶化してやろうと思って杉を見た。
杉の横顔が強張っていた。

「ああ、びびってる」
重々しい口調だった。

「ヤバい仕事やとわかってて、なんで俺に振る?」
俺は訊いた。

「それは、だな‥‥」

 

 

Section02 見出しと身だしなみには気をつけろ

葉巻を吸う男性
By: Joseph Vasquez

俺は大阪の北の端、箕面にいた。

 

豪邸が建ち並ぶこの辺りの地域は、俺のような庶民には縁のない場所だ。

杉に教えられた住所を頼りに車を走らせる。
廃車寸前のマークⅡだ。

買い替える金がないわけじゃない。
気に入ってるから。
乗り続ける理由はそれだけで充分だ。

 

一軒の、一際大きな屋敷にたどり着いた。
俺が門に車を近づけると、待ち構えていたように、門扉が開いた。

噴水のある庭を進み、屋敷前の車寄せに停車した。
前方に最新型の白いレクサスが停まっていた。

 

「あなたが三十路さん?」
出てきたのは、昔は美人で通っていたとおぼしき背の高い女だった。

年の頃は60くらい。
いまだに若い頃の自分が忘れられないらしく懸命に若作りをしているが、それが逆に年齢を浮き彫りさせていることに気づいていないらしい。

 

女は酒井美里と名乗った。
そういえば馬鹿でかい門柱に、そんな名字の書かれたプレートが貼られていた気がする。

 

通された部屋は芝生の敷かれた庭に面している40畳ほどのリビングだった。

窓際の大きなテーブルに案内され、紅茶を振る舞われた。
一口啜って、もう飲まないことに決めた。

ハーブがブレンドされた飲み物は苦手だ。

 

「イメージと違うわね、あなた。コンサルって、もっと胡散臭い感じの人かと思ってたわ」
美里が言った。

「奥さん、俺はSEで、ウェブのコンサルです。業界では俺みたいなタイプは珍しくないですよ」

胡散臭いのは杉のイメージだろうと俺は思った。

ついでに言うと、杉は「偉そう」な男だ。
断じて言うが、奴は別に偉くはない。偉そうなだけだ。

そして、俺自身は年齢より若く見られるし、細身でメガネをかけているから、華奢なイメージを持たれることがある。
そして、そういう人間はIT業界には多い。

「へぇ、だったらその業界は怖いところなのね」

「どうしてそう思うんです?」

「あなた、にこやかな表情してるけど、目の奥が笑ってないじゃない」

どうやらただの有閑夫人ではないらしい。
そう思った。

 

「で、依頼の内容はどんなことです」
俺はコンサル時の通常の手順を踏まず、単刀直入に切り出した。

その方が良さそうだと思ったからだ。

「私はお店を持ってるの。服や小物のセレクトショップよ。その店のホームページのアクセスを上げてほしいの」

「それだけ、ですか?」
俺は拍子抜けして訊いた。

「どういうこと?」

「いや‥‥」
杉はヤバい仕事だと言っていた。

だが、よくよく思い返してみると、内容までは聞いてない。
杉が詳しく語らなかったのだ。行けばわかる、と。

面倒な仕事を俺に振るために、嘘を吐いたのか。
俺が好奇心からその仕事を受けるだろうと…。

 

「お礼ははずむわ」
酒井美里が言った。

「条件面は後で話し合いましょう。まずはそのホームページを…」

「その代り失敗したら死んでもらう」
美里がこちらの話を遮るように付け加えた。

「何を持って失敗と言うんです?」
俺は咄嗟に聞き返した。

視線が絡んだ。
美里はこちらを射すくめるように真っ直ぐ見ている。

俺は目を逸らさなかった。
もしかしたら、逸らせなかったのかもしれない。

 

「合格、よ。合格」
美里が口元だけで笑った。

心から笑っていないその証拠に、こう続けた。

「と言っても、死んでもらうって言ったのは嘘じゃない」

「こちらも嘘やとは思っていませんよ」
俺は声を押さえて言った。

「おかしな人ね、あなた」
そう言って、美里が口元に手をやって笑った。

 

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Section03 背景はシロ、文字はクロ

夕暮れ
By: Sudarshan V

敷地を抜け、門柱から出た。

角を曲がったところでスマホを手にとった。

杉に電話をかける。

 

留守電に直結した。

「くそっ」
俺はスマホを助手席に放り投げた。

 

これまで成果報酬の仕事は受けたことがある。

だが、失敗したときのペナルティがある成果報酬の仕事など聞いたことがない。
しかも、それが生死に関わるなんて、タチの悪い冗談だとしか思えなかった。

 

酒井美里という女、あの目は捕食者のそれだった。
俺にはわかった。

そして、それがわかった俺に、あの女は気づいた。

 

うかつだった。

すぐにでも視線を逸らすべきだったのだ。

俺はある意味、気に入られた。
それが今、この上なく疎ましかった。

あの女は蜘蛛のようだった。
そして、俺は徐々に糸を巻かれていくエサ…。

 

酒井美里。背景を調べなければならない。

 

そう思った。

 

【続く…、のか?】

 

Section00 『三十路 偉そう』で上位表示

この記事は【第1回:テッテレー企画】捜せ!盗まれた三十路の品格!という企画への参加記事です。

連載記事ではないので、続きはありません、多分。

 

当サイトはドメインパワーが低い上、調子に乗って小説を書いたので上位表示は無理ですw

しかも誰かの影響を受けてはいけないと企画参加記事を読まずに書いたら、Nobuo_CREATEさんと丸カブリするという悲劇w

すみませんでした。(誰に謝っているんだろうか)

 

【追記】

続きをシリーズ物で書くことになりました。小説名をウェブ狼と名付けました。
よろしければ下記リンクからどうぞ。

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