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【読み切り短編小説】不条理 ~モノローグ~ ※18禁指定

男女の影
By: Trevor Hurlbut

 

本編には、やや過激な表現が含まれます。
以下に該当する方は、閲覧をご遠慮ください。

1. 18歳未満の方
2. 道徳観念が強い方
3. 暴力的表現が苦手な方
4. 性的表現が苦手な方
5. 人生が不条理なものであることを理解しない、もしくはそこから目を背けている方

では、本編をご覧ください。

不条理 ~モノローグ~

私が彼を殺してしまったのは、至極当然の成り行きだったのです。

いえ、そう言ってしまうと語弊があります。

私に残されたほんのわずかな、しかし決して捨て去ることのできない自尊心のためにも、言い換えさせてください。

彼が私をして、殺さしめたのです。

 

きっかけは、ほんの些細なことでした。

そのときまでは、まさかそんなことはあるまいと、自分を納得させていました。

それが彼のためであり、また自分のためでもあったからです。

私は、極端な行動に走りがちだという自身の性向を知っていたので、そうならないためにも自分を誤魔化していました。

しかし、あのときは自分自身を納得させることができませんでした。

 

彼は、私を明確に拒否しました。

ですから、その報いを受けなければならなかったのです。

 

しかし、ここで私は慌てて読者の皆様に弁明をしなくてはなりません。

私は、自身に特別な価値を見出してはいません。

 

なのに、なぜ私を拒否したという理由で彼をあやめたのかって?

それを説明させていただくために、この文章を記しているのです。

今しばらくお付き合いくださいませ、親愛なる読者の皆様。

 

部署の飲み会で、それは起こりました。

私が常々、嫌っている上司がいるのですが、その上司が彼にこう訊いたのです。

「おい、K。おまえ、独身だったな。好みのタイプを発表しとけよ。誰か紹介してくれるかもしらんぞ」

Kとは彼のことです。

プライバシー保護のため、イニシャルで失礼します。

死人にプライバシーがあるのかという辛辣なジョークは口になさらないようにお願いします。

 

彼はこう答えました。

「え、いや、そ、そっすね」

お察しの通り、彼は口下手です。

そこが気に入っている点だったのですが、それはいいとして。

 

馬鹿な上司が、しつこくその話題を続けました。

「おい、『そっすね』じゃ、わからんのだ。たとえば、外見だけでも色々あるぞ。小柄な子が好きとか、細身の子が好きとか」

「あ、えっと。外見は…、部長がおっしゃった感じで、はい」

私はこの時点で、『もうやめろ』と怒鳴りたかったのですが、ハゲ頭の部長が尚も続けます。

「小柄で細身。性格は? 明るいのと暗いのどっちだ」

「あ、明るい方が」

「じゃあ、体育会系か文化系か」

「えっと…」

「はっきりしねぇな。テニス部と茶道部だったらどっちだ」

「えっと、テニス部、ですかね」

「だったら体育会系だな。よし、わかった。小柄で細身、元気が良くて明るいテニス好きで活発な子でいいな?」

「え、あ、そう、ですかね、はい」

「よし、みんな。Kの好みはわかったな。まあ、この部署にはいないみたいだけどな。ハハハ、ゲフッ」

ハゲ頭の部長は余計なダメ押しをしてくれた上に、あろうことかゲップまでしたのです。

先輩や同僚は笑っていましたが、私はそれに同調することができませんでした。

 

 

私は、身長171cm、体重98kgです。

そんな体型ですから、スポーツは苦手です。

しかも、小さい頃から大きくて目立ったせいで、いじめられ、根暗な性格に拍車がかかりました。

これで、せめて顔だけでも良ければいいのですが、天は私に一物も与えてはくれませんでした。

 

私はいたたまれなくなって、そっと席を外し、トイレへ行きました。

あまりのショックからか吐き気を催したので、便器に胃の中身をぶちまけました。

その前に食べたレバニラ炒めのニラの緑が、やけに鮮やかだったことを覚えています。

私は自分の顔を鏡で見るのが嫌だったので、口元だけ軽くゆすいで、トイレを出ました。

 

そこで、彼、いや、裏切り者に出くわしたのです。

しかし、私の口を突いて出たのは、次のような言葉でした。

「あ、Kくん。大丈夫?」

そう訊いたのは、彼が青白い顔をしていたからです。

「ああ」

ぶっきらぼうに彼がそう答えました。

そんなところが、彼の魅力でした。

「大丈夫そうじゃないよ? お水持って来ようか?」

 

「この際だから、言っとくけどさ」

彼が私を見て唐突に、そう言いました。

こんな近くで目線が合うことなんて、久しぶりでしたので緊張しました。

ですが、その次の一言が私を、一寸の光も注がない暗い谷底に落としました。

「付きまとうのやめてくんないかな? 迷惑なんだよね」

「え、そんな……」

私は二の句を告げませんでした。

彼の口から、そんな言葉を聞くなんて。

追い打ちをかけるように、彼は言いました。

「はっきり言うとさ。気持ちわりぃんだよ、デブ。付きまとうな」

悪酔いして、そんな暴言を吐いたと思ったのですが、いや、そう信じたかっただけかもしれません。

 

確かに私は彼の分の弁当を作って持って行ったり、退社時間を合わせて一緒に帰るために、彼と同じマンションに引っ越したりしました。

しかし、それもこれも彼のことを思った結果の行動だったのです。

なぜなら彼は外食が多いらしく、栄養面が心配だったからです。

ちゃんと食べているのかわからないくらい体が細かったので。

そこが私の好みではあったのですが、それはまた別の話です。

 

とにかく、彼は私を頑として拒否しました。

私は彼にこんなに尽くしているのに、彼はそれを受け入れてくれないどころか、暴言を吐いて私を傷つけました。

いえ、私が傷ついたということはどうでもよかったのです。

彼がそんな言葉遣いをすることを、私は許せなかったのです。

ですから、彼がトイレから出てくるのを待って、こう言いました。

 

「さっきの言い方、良くないよ」

「は?」

「相手を傷つけるためだけに言ったでしょ? そういう言葉の使い方は良くないと思う」

「傷つけるために言ったんだよ。これまで普通に言っても聞き入れなかっただろ、おまえ」

それだけ言って、彼は飲み会の会場に帰って行きました。

 

しつけが必要だ。そう思いました。

 

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幸い次の日はお休みでしたので、私は買い物に出かけました。

商店街にある個人経営のスポーツ店に行き、金属バットを購入しました。

ビヨンドマックスとかいう3万円くらいするバットです。

専用のバットケースに入れて、持って帰りました。

 

土曜日の彼の行動は決まっています。

電車で一時間ほどかけて秋葉原へ行きます。

そして、昼間は地下アイドルのイベントに参加し、夜は行きつけのメイドバーへ行くのです。

それを知っていたので、私は平均的な帰宅時間の二時間ほど前から駐輪場の陰に身を潜めて待ちました。

私と彼のマンションは住宅街にあるので、夜になると辺りは静寂に包まれます。

どこからか夏の虫の鳴き声が聞こえてきたことを覚えています。

 

ちょうど二時間ほど経った頃、彼がいつものように千鳥足で帰ってきました。

そう、彼はあまりお酒が強くありません。

酔った彼なら何とかなります。

私は太ってはいますが、非力ですので万全を期したかったのです。

 

「うわっ」

私が突然、姿を現したので、彼が驚いてのけぞりました。

「なんだよ、おまえ。気持ち悪ぃな」

彼の言葉が再び、私を傷つけます。

やはり、しつけが必要なようです。

 

「な、なんだよ。おい、まさか、やめろ!」

私はビヨンドマックスを両手に持ち、振り上げました。

それを、彼の脳天に目がけて振り下ろしました。

しかし、彼はそれを尻もちをつくことでかわしました。

 

「おい、やめろ。俺が悪かった」

私は姑息な言い逃れが大嫌いです。

第二撃目は、立ち上がろうとした彼の肩口に当たりました。

骨の砕ける鈍い感触が掌に伝わりました。

「ぐえっ」

そんなような声を出して、彼が駐輪場の横を転げ回ります。

その姿は無様でした。

何とか助けてあげたい。

そう思いました。

 

と、同時に、私の心が妙な充足感に満たされました。

立ち止まって考えると、その感情の正体がわかりました。

 

そう、今この瞬間、彼は私だけのものになっているのです。

私だけの彼。

なんて素晴らしい響きなんでしょう。

 

と思っていたら、彼が肩を押さえて立ち上がり、ふらつく足で私から遠ざかり始めました。

私は身の内から湧き上がる、これまで感じたことのない幸福感と共に彼を追いかけました。

「やめてくれ。タスケテクレ」

肩越しに私と目が合った彼が、そう叫びました。

心配しなくても、すぐに助けてあげるのに。

 

彼に追いつき、その首筋に金属バットを振り下ろしました。

「ギャッ」

普段聞けない彼の声を耳にしたとき、私は背筋がゾクゾクしました。

もっと聞かせてほしい。

その声を耳元で聞きながら、彼を犯したい。

そう、思ったことを覚えています。

 

気づいたときには、私は大勢の男たちに取り囲まれていました。

バットを取り上げられ、地面に組み伏せられていました。

不思議と痛みは感じませんでした。

これまで感じたことのない多幸感が、私を包んでいたからかもしれません。

 

途切れ途切れに、男たちの声が聞こえてきました。

「手錠!」

「よし、ゆっくり立ち上がれ、この野郎」

「ズボン履かせ……。いや、毛布持ってこい。腰に巻け」

 

「凶器と思われる金属バットを所持した男を確保」

 

【了】

この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

 

 

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