受験生のみんなに約束してほしいことがある。聞いてくれ。(受験失敗談①)【前編】
![顔を手で覆う女性](http://joujusugi.com/35defa/wp-content/uploads/2015/01/8025692978_ddec2400e8.jpg)
今まで誰にも語っていなかった事実だ。
でも、受験生にはあの惨劇を繰り返させたくない。
ありのまま起こったことを話すぜ。
ちょっと長くなるが、「馬鹿な野郎だ」と思いながら聞いてくれ。
1998年2月25日、神戸
1998年2月25日、僕は神戸にいた。
震災から数年、街はまだその傷が癒えていなかった。
前日、僕は関西学院大学へ進んだ同級生と遊んでいた。
久しぶりに会った彼は垢抜けていた。大学生活を楽しんでいるように見えて、まぶしかった。
そう、僕は受験浪人をしていた。
現役で地元の公立大学に受かっていたものの、進学しなかった。
理由は彼女がいたから。
バドミントン部だった彼女は照れ屋で、はにかんだときの表情がたまらなくかわいかった。
古臭い表現だが、僕は彼女にぞっこんだった。
その彼女は関東の大学に進むことになっていた。
僕は彼女と別れたくなかった。その一心だった。
正直、大学なんてどこでも良かった。
でも、僕は家庭の事情で私立大学には行けなかった。
関東近辺の国公立といえば、東大か一橋、東京都立(現、首都大学東京)、横浜国立。
進学校だったから周りの影響で、それらの大学より偏差値の低いところは眼中になかったんだ。
いずれもレベルの高い大学だ。
今の僕には無理だと当時、思った。
だから、浪人した。
そう、当時の僕は主体性なんてゼロに等しかった。
浪人すれば東大にだって行けると本気で思っていた。
実質、半年の勉強で大学に受かってるんだ。
完全に天狗になっていた。
今となっては当時の僕に言ってやりたい。
「絶対に無理だ」、と。
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別離は突然に
でも、僕は浪人三か月目で振られたんだ。
笑ってくれ。
理由なんて簡単さ。
「待っていられない」
そりゃ、そうだ。
近くに来るかどうかもわからない男をそんなに待てるわけがない。
涙も出なかった。
いや、強がりはよそう。
風呂場でちょっと泣いた。
それで、なぜ神戸大学かって?
彼女の元々の志望校だからさ。
ただ、それだけだった。
復讐とか怨恨とか、そういったネガティブな感情は一切なかった。
言葉にするなら、
「彼女の夢を叶えてやろう」
ってとこか。
ああ、恥ずかしい野郎だ。
今、思い出すだけで悶絶ものだ。
笑ってくれ。
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神戸大学までの長く険しい道のり
![](http://joujusugi.com/35defa/wp-content/uploads/2015/01/4673399207_836c68e73a.jpg)
(写真は本文と関係ありません)
話を戻す。
僕は神戸にいた。
1998年2月25日、国立大学前期試験の受験日。
朝。
吐く息が白かった。
阪急神戸線、六甲駅。
周りは受験生であふれていた。
僕は神戸大学行きのバス停を探した。
すぐに見つかった。
バスはちょうど出発したところだった。
そのバスは受験生ですし詰め状態だった。
更に、バス停にはまだ多くの受験生らしき若者が待っていた。
「これは無理だ」
口中につぶやいた僕は内心少し焦っていた。
左腕に着けたG-SHOCKに視線を落とす。
試験開始まで30分ほどあった。
大学までは徒歩で15分から20分。
大学案内の冊子に、そう書いてあった。
まだ間に合う。
僕は坂道を歩く受験生の群れに加わった。
歩き出して少し経った頃、前を歩く若者二人の会話が一部聞こえた。
「でも、ホウガクブってさ・・・」
『あ、この人たちも法学部へ行くんだ。
だったらついて行けばいいんだな。』
そう思った僕はひたすら彼らの後を追った。
坂道はどんどん急になっていく。
45度くらいあるんじゃないかと思うほどだ。
冷えていた体が徐々に温まってくる。
厚着をしているせいで、汗が滲む。
ふとそれらしきレンガ造りの建物が前方に見えてきた。でもそれは違ったらしい。
遠くに目をやる。建ち並ぶ高層マンションが視界に飛び込んできた。
まだなのかと焦れ始めた頃、受験生が吸い込まれるように入って行く門が現れた。
再び、時計に視線をやる。
試験開始、10分前。
間に合った。
引き続き、前の二人を追いかけ、キャンパス内を進む。
受験会場らしき建物が見えた。
と、僕はそこで衝撃的な一言を耳にする。
「工学部受験生は会場に入ってください。間もなく試験が始まります」
後編に続く
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