新卒で入った会社が割とブラックだった話②~奇々怪々? 人事異動、移動~
新卒で入った会社が割とブラックだった話②~奇々怪々? 人事異動、移動~
以下、この話はフィクションだと思って読んでください。
フィクションに決まっています。大事なことなので二回言いました。
前回はコチラ
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話①
辞令は突然に…
年末も押し迫った頃、不意にそれは訪れた。
東京研修の辞令が下ったのだ。
「年末年始は東京で過ごすのか」
そう思うと、少しだけ気持ちが暗くなった。
しかし、その気分も束の間、次の日、万全の準備をして出勤したら店長(T課長)に告げられた。
「あ、杉。おまえの研修延期になった」
顔を合わせるなり、T課長が言った。
「え? 何でですか?」
「多分、向こう(東京)で異動があってゴタゴタしてんだろ」
「はあ、そうですか…。って、準備したのに、これ」
僕は昔の洋画に出てきそうなミリタリー系のどでかいズタ袋に荷物を詰め込んで来ていた。
結局、年末年始(と言っても休みは31日と1日のみ)は彼女(今の嫁)と過ごした。
東京に着いたらタコ部屋入居
まだ松もとれない1月の寒い日。
確か5日か6日だったと思う
僕は改めて東京研修を告げられた。
T課長が東京に呼び戻されることになったから、同じタイミングでということらしい。
実は東京へ行くのは生まれて初めての経験だった。
T課長に連れられて、上野駅に降り立つ。(課長は下町生まれの江戸っ子)
すると改札口に、元官僚の古賀茂明さん似(報道ステーションで古館キャスターとひと悶着あった方)の人が待っていた。
(古賀茂明さん、この方ですね)
「おう、H」
T課長がその人に声をかけて、僕を紹介してくれた。
「この人がH係長。元は大阪店で、おまえと入れ替わりで大阪に帰ることになる」
「あ、そうなんですね。杉です、よろしくお願いします」
僕はH係長に頭を下げた。
「じゃあ、俺はここで。後はHに任せるからよ」
T課長はそう言って、夜の上野の街に消えた。
「じゃあ、行くか」
そう言うH係長の後を追って、僕は東京という大都会に足を踏み入れた。
寮は本店近くのマンションで1DKだった。
16畳程度の部屋に二段ベッドが一つあるだけだが、多いときで五人で住んでいたことがあるらしい。
正にタコ部屋というべき環境だった。
幸い、僕はH係長と入れ替わりで入ることになっていて、そのときは一人になったから気楽なものだったけど。
社長、登場
次の日の朝、起きたら、既にH係長は大阪へ戻るために部屋を出た後だった。
僕は店(会社)の制服に着替えてマンションを出た。
職場となる本店まではすぐ近くだ。
本店がある通りの角で待っていると、まもなくT課長が来た。
「おはようございます」
「おう。ついでだから、おまえも朝礼に参加していけよ」
「いいんすか?」
「後ろの方にいりゃ、大丈夫だからよ。おもしれえもんが見れるぜ」
「え? 何すか? それ」
「見てのお楽しみだって。っていうか、俺がやられるかもしれねぇけど」
課長が自嘲交じりの笑みをこぼし、本社ビル二階への狭い階段を上がる。(一階は店舗)
僕は何が何やらわからないまま背後について行った。
階段を上がりきったところの二階は会議室だった。
と言っても、さほど広くない部屋で、そこに三十人近くの大人がいるせいで、最後尾の僕はほとんど部屋からはみだしているような状態だった。
課長は人垣をかき分けて中に入って行った。
手持無沙汰となった僕は、ひそひそ声で雑談する先輩たちの背後で、特に何も考えず突っ立っていた。
すると、しばらく経ってドアの開く音がした。
と、同時に
「ご苦労様です!!!」
という男たちの声が何重にも重なって耳朶を打った。
社長が登場した。
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朝礼という名の公開説教、否、公開罵倒
社長には一度だけ会っていた。
11月に大阪店を視察しに来たときだった。
僕はたまたま上司に頼まれておつかいに行っていたので、社長の帰り際に挨拶をしただけだった。
社長は小柄で太っていて、芸能人の『藤○弘、』にガマガエルの成分を混ぜた感じの容姿だった。
僕は以前に何度か提出した作文(会社の行く末をどうのこうのというお題のもの)のおかげで、なぜか気に入られていたようで、
「おう、お前が杉か。まあ、頑張れ」
という感じで声をかけられていた。
その社長が入ってくるなり、会議室に糸を張りつめたような緊張が走った。
そして、そこからは社長の独壇場だった。
まず、前日の営業成績のことから始まり、今月の売り上げ、先月の売り上げ、フロアごとの売り上げについての話が始まった。
それは控えめに言って『説教』、普通に受け取ると【罵倒】だった。
その日は『k』という課長が槍玉に挙がっていた。
「おい、K。これについてどう思ってんだい、おまえは。ああん? なんだい、その辛気臭ぇツラは? 何か言いてぇことがあるなら言ったらどうなんだい? ああん?」
「いえ」
「おい、『いえ』ってのは何だい? どういう意味なんだい、それは。おまえんとこの売り上げが伸びてねぇことについて聞いてんのに、それだけじゃわからねぇだろうが。ああん?」
と、まあ、最初から最後までこういった口調で朝礼は進んだ。
ときには上述した以上の、人格否定ともとれる発言もあったけど、どうやら日常茶飯事らしかった。
それが証拠に、朝礼が終わった後、槍玉に挙がった人は他の社員から、
「めっちゃ言われてましたね。やばいっしょ」
といった感じでからかわれていたからだ。
でも、K課長は真面目な人で思いつめるタイプらしく、誰も声をかけていなかったけど。
【続く】
続きはコチラ
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話③~意味ない駆け引き~
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⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話①
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