新卒で入った会社が割とブラックだった話①
目次
新卒で働いた会社が割とブラックだった話①
以下、この話はフィクションだと思って読んでください。
フィクションに決まっています。大事なことなので二回言いました。
当然のことだが、勢いで行動すると良くない
大学を半年間留年し、9月に卒業した僕は、その足で大阪へ向かった。
何かと便利な都会に住みたかったし、今の嫁(当時の彼女)が一足先に大阪に住んでいたからだ。
特に何も考えず、大阪に向かったのだが、そう言い切ってしまうと語弊がある。
というのも、当時の僕にとっては場所なんてどこでも良かったのだ。
なぜかって、僕はすぐにでも作家として活動するつもりでいたからだ。
実際、書きかけの小説(その時点で原稿用紙300枚超)を用意していた。
それを書き上げれば、後は何とかなると思っていた。
だが、そこには致命的な問題があった。
賢明な読者諸氏にはもうおわかりのことと思う。
『その小説がダメだったらどうするの?』
ということだ。
結果から言うと、その小説はとんでもない駄作だった。
とにかく全てがダメだった。
若さゆえの過ちとはこういうことを言う。
勢いだけで計画を練ると良くない。
この辺のことはここに記している。
⇒撤退でも敗北でもなく、「転進」だと思えるようになったら楽になる
バイト気分で入社
小説を書く以前に、僕は生活していかなければならなかった。
家賃を払って食費を稼がなければならない。
当然のことだ。
だから、僕はバイトをしようと思い、バイト情報誌の『an』を手にした。
いくつかピックアップした中から、バイク用品販売店に応募した。
フルタイムのバイトだったし、僕はバイクが好きだったからだ。
でも、この選択が約一年にわたる苦闘を呼ぶことになろうとは、そのときの僕には想像もつかないことだった。
私服で面接。だってバイトだし
(このモニュメントがある近辺ではありません。イメージです)
大阪府の北の方に、その店はあった。
大阪市内からはかなり離れていて通勤は大変そうだったけど、初めての土地だったから少しだけ心が弾んだ。
時間通りに店に入った。
バイク部品やヘルメットが所狭しと並べられていた。
「いらっしゃいませ」
と声をかけてきた店員さんらしき人に話しかける。
「今日、○時からアルバイトの面接をしてもらうことになっている杉です」
少し驚いたような顔をして、その店員さんが店の裏手にある事務所へ案内してくれた。
すぐに店長さんが来て、僕を面接してくれた。
感じの良い人で、「この人の下なら大丈夫そうだな」と思ったことを覚えている。
「いつから来れそう?」
店長さんが面接の終わり頃に言った。
「いつからでも大丈夫です」
「じゃあ、明後日から来てくれる?」
店長さんがスケジュール帳を見ながら言った。
「はい、わかりました」
僕は元気良く返事をした。
あっけなく採用が決まり、少し拍子抜けした。
でも、「バイトだし、こんなもんかな」とも思った。
店内に戻り、案内してくれた店員さんに挨拶をして、その日は帰宅した。
直属の上司に言われた言葉
(実際の店舗ではありません)
店は二階建てだった。
一階はバイク部品とバイク整備場、事務所。
二階はヘルメットやブーツ、グローブ、服、アクセサリーなど。
そこに、店長と四人の店員と、整備士が一人いた。
僕は二階のバイク用品フロアに配属された。
働き始めて3日目の仕事終わり、モップでフロアを拭いていたらフロアリーダーに言われた。
「おまえ、案外ちゃんとしてんねんな。どんな奴が来るか心配してたんやけど」
帳簿をつけながら言うフロアリーダー。
「はあ、ありがとうございます」
床を拭きながら僕は答えた。
「仕事も真面目にやるし、聞いてた話とはちょっと違うな」
「え? 何て聞いてたんですか」
顔を上げるとフロアリーダーと目が合った。
「いや、面接に私服で来たって言うから、あかん奴やと思っててん」
「はあ、そうですか」
「あんなあ、普通、就職の面接いうたらスーツで来るもんやで」
「すみません」
一応、頭を下げたけど、心の中では『いや、バイトやし』と思っていた。
募集要項に『社員登用アリ』とは書いていたけど、僕は社員になる気はなく、あくまでバイトの面接だと思っていたので私服で行った。
しかし、これは僕の勘違いというか、間違いだったのだろう。
バイトであれ、二十歳を超えた社会人なので面接と言えばスーツが当たり前なのだ。
この辺はまだテキトーな大学生気質が抜けていなかったのだろうと思う。
勤務時間に疑問
*******勤務形態
勤務時間:朝9時~夜9時
休憩:昼休憩は(長くて)15分。
残業など:日によっては(というより高確率で)残業アリ。
休日:週一回、火曜日。(本店は月曜日)
給料:20万円、賞与なし(社員も賞与なし)
今考えると、明らかにおかしい。
業界によっては当たり前と言う声もあるだろうけど、それが当たり前なんてやっぱりおかしいと思う。
しかも、売り上げが足りない月なんかは、休日でも店長とフロアリーダーが二人で店を開けていたし、場合によっては自腹で品物を買って売り上げにしていた。
今でいうところのブラック企業なんだけど、当時はそんなもんなんだろうと思っていた。
しかし、昼休憩を15分丸々とると「長い」と言われる職場って異常だ。
とはいえ、僕はこれ以上のブラックな職場(休み無し、15時間勤務)も経験しているから、まだ甘いと言わざるを得ないんだけど。(笑)
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やっぱりこの会社って…
仕事にようやく慣れた頃、店長が東京の本店に呼び戻された。
その代わりに来たのは、ちょっと強面だけど、冗談ばかり言っている『T課長』だった。
課長という役職だけど、課なんてあるようでないところだった。
ちなみに、呼び戻された店長は役職が『主任』だった。
同じ時期、東京へ研修に行っていた社員が戻って来たり、その代わりに別の社員が東京研修へ行ったりと、入れ替わりが激しくなっていた。
疑問に思った僕はあるときT課長に訊いた。
やることがなくて、お客さん待ちのときだった。
「最近、やたらと人事異動がありますね」
「ああ、おまえ、入ってきたばかりで知らねぇんだよな。こんなの当たり前だぜ」
T課長はレジカウンター内でこともなげに言った。
「当たり前?」
僕はT課長の横顔を見た。
「そう。それに近いうちにおまえも東京研修に行くことになるだろうし」
「え? そんなの聞いてないっすけど」
「そりゃ、そうだろう。言ってねぇもん」
「いつですか」
「それは社長に訊いた方が早いな」
「え? どうやって訊くんですか? 電話をかけて?」
僕はレジカウンターに置いている電話の受話器をとる振りをした。
「バッカ、本気で訊く気か。怖ぇことすんなよ」
「冗談っすよ」
「ま、社長の気分次第だからな。下手したら明日にもって感じだ」
T課長は口をへの字にして言った。
薄々感じていたが、やはりこの会社は社長のワンマンなのだ。
そう思った。
「続き」
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話②~奇々怪々? 人事異動、移動~
【ご指摘があったので追記】
僕としてはバイト情報雑誌で見つけたことですし、バイト感覚で入った会社なんですが、会社としては入社前提だったらしいです。
これは入ってから気づきました。
バイトでの入社は試用期間のようなものでしょう。
後にわかることですが、何度も労基署の調査が入るほどの会社でしたから、まともなリクルートはできなかったようです。
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