新卒で入った会社が割とブラックだった話⑥~派閥の話、前篇~
新卒で入った会社が割とブラックだった話⑥~派閥の話、前篇~
以下、この話はフィクションだと思って読んでください。
フィクションに決まっています。大事なことなので二回言いました。
前回までの記事はコチラ
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話①
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話②~奇々怪々? 人事異動、移動~
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話③~意味ない駆け引き~
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話④~呼び出しをくらう僕~
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話⑤~キレる僕~
派閥なんて嫌いです、いや、大嫌いです
【派閥】
僕が嫌いな言葉の中でも最たるものかもしれない。
というのも、僕は典型的な『一匹狼』タイプだからだ。
『一匹狼』というと、ちょっとカッコ良く言い過ぎかもしれない。
とにかく僕は集団行動が苦手なタイプの人間なのだ。
社会不適合者と紙一重であるとも言える。
そんな人間が派閥争いに巻き込まれると、どうなるか。
そう、どこにも属さないことを選んで、孤立してしまうことになる。
この会社(新卒で勤めた会社)を辞めて長いことフリーで活動したのも、無理はない。
専務派と部長派
派閥がなぜあるかというと、「人間が3人いれば2つの派閥が生まれる可能性がある」という言葉で表される通りだと思う。
人間はグループを作る習性を持っているのだ。
それが部署同士の垣根を超えて、仕事を円滑にするためなら良いと思う。
いや、むしろ歓迎すべき慣習だと思う。
しかし、それが派閥間による人事抗争のようなものになると、他人の足を引っ張る行為に直結するから考えものだ。
そして、こんな会社にも『専務派』と『部長派』があった。
専務と部長の秘技
派閥の話へ行く前に、少し寄り道したい。
専務と部長の話だ。
専務も部長も以前の話に少し出てきたけど、二人ともこんな会社で出世するくらいだから、まともな仕事のやり方をしていない。
僕が見た限り、専務がよくやっていたのは売上個数を伸ばして日報の見栄えを良くするために、比較的高額な商品が売れたとき、それをそのまま日報に書き入れず、安価な商品が二つ売れたことにしていた。
売り上げ金額は合うかもしれないが、これをやっていると在庫数が合わなくなる。
しかし、それでも何とかなるのだ。
これに関してはいずれ紹介する。
部長は、というと、これは僕が直接見たわけではないから噂なのだが、しょっちゅうレジの金を胸ポケットに入れていたらしい。
正確には商品が売れたとき、レジを通さずに代金を直接胸ポケットに入れるということだが、まあ、同じことだ。
他の社員が胸ポケットに手を入れる素振りをしたら、それは部長のことを指し示すくらいに浸透していたから実際にやっていたんだろうと思う。
そんなことをしたら、売り上げが下がり、自分の首を絞めることになるのではないか指摘する向きもあるだろう。
しかし、そんな心配は無用だ。
噂によると、部長は休日になるとその金を持ってパチンコに行き、増やしてからレジに戻していたというのだ。
売り上げが足りないときは自腹を切る社員が後を絶たないと先述したけど、部長クラスになるとその上を行くのだ。
あくまで噂(とはいえ、公然の秘密のように言われていた)なので、真偽のほどは定かではないが、何とも恐ろしい会社だと今になって思う。
当時の僕がどう考えていたかというと、
「バカバカしい」
と思っていた。
だってそうだろう。
そんなことをしても実際の売り上げが上がるわけではないのだ。
とはいえ、それは僕が末端で、しかもまだ若いからそんな風に考えられたのかもしれない。
フロアや店舗の売り上げに対して責任を負う立場になると、しかも勤続年数が長くなって歳が上がると、違っていたかもしれない。
でも、当時の僕はそういった行為全てを唾棄していた。
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異動で専務と…
前回、僕が社長に食ってかかったという話をした。
その後、すぐにまた人事異動があって、僕はフロアを移動させられた。
そこは大きな通りに面しているビルの一階(そのビルは一階から上まで自社の店舗が入っていた)フロアだった。
そして、フロアリーダーは専務だった。
どういう経緯でそういうことになったのかわからなかったけど、T課長がその意味を教えてくれた。
仕事終わりに誘われて、僕はT課長と近くのラーメン屋にいた。
「おまえ、今、○○館の一階だよな」
T課長が麺を旨そうにすすって言った。
「ええ、そうです」
僕はチャーシューの最後の一切れを口に放り込んでそれを味わい、箸を置いた。
T課長のグラスにビールを注ぐ。
店内には僕らの外にも客が沢山いて、それぞれに大きな声でしゃべっていた。
「おまえ、専務に気に入られたみたいだぜ?」
「冗談でしょ」
気に入られる要素がない、と思った。
「まあ、半分冗談で、半分本気だ」
「どういうことっすか」
「専務はおまえみたいな何を言い出すかわからねぇ奴は監視しておくに限ると思ったんだろうよ」
「はあ」
「手元に置いときゃ、安心だからな。何でかって…」
T課長が両手でラーメンの器を持って、スープを飲み干した。
「専務はSと違って自分の書く日報に横やりなんか入れさせねえし、それに対して文句も言わせねえ」
「なるほど」
そうしておけば、フロアリーダーより売り上げを立てるフロア員なんていなくなるし、数字の書き換え云々の話も当分は出てこない。
そういうことなのだろう。
「社長の前じゃ大人しくしてるけど、あの人、怒ったらなかなかやべぇんだぜ? おまえも気をつけろよ」
「はあ」
考え事をしていた僕は曖昧な返事をした。
「なんだよ、俺の言うこと聞けねぇのかよ」
T課長が凄んだ。
「いや、そういうわけじゃないっす」
「だったら、それでいい。じゃあ、行くか。ほれ」
そう言って、T課長が左手を差し出してきた。
「え? なんすか」
「金。割り勘だろうが」
「え? おごりじゃないんすか」
僕は殊更に驚いて見せる。
「バッカ。何が悲しくて野郎におごらなきゃならねぇんだよ。おまえが美女なら話は別だけどよ」
「ま、初めからわかってましたよ」
僕はグラスのビールを飲み干して、財布を出した。
【続きはコチラ】
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[…] ときは自腹を切る社員が後を絶たないと先述したけど、部長クラスになるとその上を行くのなのです。 [引用元] 新卒で入った会社が割とブラックだった話⑥~派閥の話、前篇~ | 35deFA […]
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