新卒で入った会社が割とブラックだった話④~呼び出しをくらう僕~
新卒で入った会社が割とブラックだった話④~呼び出しをくらう僕~
以下、この話はフィクションだと思って読んでください。
フィクションに決まっています。大事なことなので二回言いました。
前回までの記事はコチラ
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話①
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話②~奇々怪々? 人事異動、移動~
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話③~意味ない駆け引き~
フロアリーダーというポスト
前回書いた通り、役職とは関係なく、『フロアリーダー』という存在がいた。
フロアリーダーはそのフロアの責任者で、売り上げに対する責任を負っている。
読んで字のごとくなのだが、このフロアリーダーは基本的に年功序列順で選ばれていたようだ。
だから、フロアに複数の人間がいた場合、先に入社した方がフロアリーダーに任命されていた。
例外として、フロアを任せてみたものの売り上げが悪いとか、もしくは社長に嫌われたという理由(大体は売り上げが悪いと社長に嫌われるのでほぼ同義)で『フロアリーダー』から降格された人が出た場合、その次の序列の人が選出されてフロアリーダーになるということがあった。。
しかし、基本的には年功序列だ。
ということで、僕は入って一年目のいわゆる『ぺーぺー』でしかも大阪店からの研修なので、フロアリーダーには縁があるはずもなかった。
フロアリーダーより売り上げてはいけない
東京に来て二週間くらいしたとき、フロアリーダーが替わった。
その会社では頻繁に人事異動があるので、フロアリーダーもよく替わる。
T課長の次に、僕がついたのは『Sさん』(確か役職はなかった)という温厚な人だった。
当時、三十代前半だったと記憶しているが、童顔で小柄なせいで年齢不詳に見えた。
このSさんは仕事を卒なくこなすという印象だった。
僕はこのSさんの下で、結構売り上げを立てた。
そもそも営業が苦手ではない上、その頃には商品知識もついてきていたし、営業トークもこなれてきていたからだ。
Sさんもそんな僕を信頼してくれていたのか、お客さんが入ってきても自ら接客せず、僕に譲ってくれていた。
あるとき、僕は締めの作業をしているSさんの手元を見たときに違和感を覚えた。
日報の数字が見えたのだ。
僕は即座にSさんに言った。
「Sさん。それ、数字がちゃいますやん」
「ん?」
「いや、売り上げの部分っすよ。俺の売上、今日○万円ですよ。4万円近く少ないっすやん」
「ああ、まあ、そうなんだけどさ。でも、これはほら、あれだから」
Sさんがバツの悪そうな顔で言った。
「あれって何なんですか」
「まあ、そうだね…。ほら、フロアの売上ってさ、全員で協力して作るものじゃん? だからさ…」
「いや、それはわかりますよ。でも、それはフロア全体の売り上げとして計上されるわけじゃないっすか。だから別に合計で売り上げが立ってるなら、問題ないっすやん」
「うん、言いたいことはわかるんだけどさ」
「だったら、実際の数字書きましょうよ」
「ああ、うん。わかったよ」
温厚なSさんが折れる形でその場は終わった。
そして、次の日も僕はまあまあの売り上げを立てた。
その日はSさんが日報を書いているときに近くにいなかったから知らなかったけど、どうやら実際の数字を書いていたらしい。
そのことを僕は翌日の朝に知ることになる。
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フロアに響く社長の声
朝、フロアリーダーは全員朝礼という名の公開説教に出席するので、開店時間ぎりぎりまで店には来ない。
僕は朝の掃除を終えて窓から通りを眺めていた。
朝礼が終わったらしく、フロアリーダーたちが三々五々、店舗に散らばっていく。
その中にSさんもいて、すぐに僕のいる二階のフロアに上がって来た。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
そう答えたSさんは浮かない表情をしていた。
「あ、社長から説教くらったんでしょ?」
僕は何の気なしに冗談を言った。
「いや~、まあね」
「あ、ほんまにそうやったんですか。何って? 別に売り上げ悪いってことじゃないでしょう?」
「うん、まあ、そうだね」
Sさんは歯切れが悪かった。
次の言葉を探しているうちにお客さんが入って来て、その場の会話はそれきりになった。
昼前、突如として館内放送がかかった。
『○○館の杉。○○館の杉。社長室まで』
社長のぶっきらぼうな濁声がフロアに響いた。
商品を陳列し直していた僕は一瞬、気づかなかった。
というより、社長の声は耳に届いていたけど、自分の名前が呼ばれているということに気づいていなかった。
「杉、呼ばれてるぞ」
背後からSさんの声が聞こえた。
「え? 俺っすか」
驚いて振り向く。Sさんと目が合う。
「社長室に呼ばれてるよ」
「ほんまに、俺の名前でした?」
「うん」
Sさんが頷いた。
僕は半信半疑ながら、並べていた商品をSさんに託し、店の階段を降りた。
一階に降りると、部長と先輩たちが僕を見つめていた。
その目は明らかにこう言っていた。
『おまえ、何をやらかしたんだ?』
と。
【続きはコチラ】
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話⑤~キレる僕~
前回までの記事はコチラ
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話①
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話②~奇々怪々? 人事異動、移動~
⇒新卒で入った会社が割とブラックだった話③~意味ない駆け引き~
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