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ウェブ狼 第三話 ~貴婦人という名の野獣~

ダイニングルーム
By: David Stanley

ウェブ狼 目次はコチラ

前回(ウェブ狼 第二話 ~貴婦人と野獣~)はコチラ

そこは、優に40畳を超えるくらい広いリビングだった。

いや、もしかしたら正確にはダイニングルームなのかもしれない。

窓際に据えられた大きなテーブルに案内されたミソジは、背もたれに王冠、肘掛けにバラ文様が施された椅子に座った。

 

テーブルに向かい合って座った、この屋敷の主人は酒井美里と名乗った。

歳の頃は50過ぎ、いや、もっといっているかもしれない。

昔は美人で通っていたのかもしれないが、今は若作りが逆に年齢を浮き彫りにさせている。

濃い化粧に、ヒョウ柄のワンピース。

自分の好みには合わないとミソジは思った。

 

「ごめんなさいね、ハリーがあんなこと」
美里が言った。

「いえ、大丈夫です」
ミソジは、あなたが伝え忘れていたからでは、という言葉を呑みこんで答えた。

「あの人は私のことを守ろうと思ってくれてるんよ。せやから悪気はないねん」

「ハリーという名前なんですか? 彼は」

「本名はアンディ・ジョーンズ。ほら、映画のインディ・ジョーンズ知ってる?」

「ジョージ・ルーカスとスピルバーグの、ですか」

ハリソン・フォードの、よ」
美里が首を横に振った。

「はあ」
ミソジは原案、監督の二人を言ったのだが、美里には通じなかったらしい。

「せやからハリーって呼ぶんよ。私、ハリソン・フォード好きやし」

「ハリソン・フォードからハリーですか」

「それ以外に何があるのん?」
美里がいぶかしげな表情を浮かべた。

「いえ」
ミソジは視線を外して言った。

目の前にある、見るからに値が張りそうなカップを持ち上げる。

一口含んで、もう飲まないことに決めた。

ハーブがブレンドされた飲み物は苦手だからだ。

 

 

「にしても」
美里が紅茶をすすってから続ける。
「イメージと違うわね、あなた。コンサルって、もっと胡散臭い感じの人やと思ってたわ」

「奥さん、俺はSEで、ウェブのコンサルです。業界では俺みたいなタイプは珍しくないですよ」

胡散臭いのは杉のイメージだろう。奴は胡散臭い上に態度がでかいから余計に印象が悪い。

「あなたみたいなタイプって…」
美里が無遠慮な視線を向けてくる。
「細身でメガネをかけてて華奢なイメージってこと?」

「ま、そんな感じです」

「ほんなら、その業界は怖いとこなんやね」
美里が少し間をおいて言った。

「どうしてそう思うんです?」

「あなた、にこやかな表情してるけど、目ぇの奥が笑ってへんから」

開け放たれた窓から入ってきた風がレースのカーテンを揺らした。

どうやら目の前の女はただの有閑夫人ではないらしい。

ミソジはそう思った。

 

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「仕事の話に移りましょうか」
ミソジは殊更に笑顔を作って話頭を転じた。

「で、ご依頼いただく内容はどんなことでしょうか」
コンサルをするときの通常の手順を踏まず、単刀直入に切り出した。

その方が良さそうだったからだ。

「うちのカフェのホームページ。それのアクセスを上げてほしいねん」

「それだけ、ですか」

「それだけって、どういうこと?」

「いえ」

杉はヤバい仕事だと言っていた。

だが、思い返してみると、どうヤバいかまでは聞いていない。
杉が詳しく語らなかったのだ。

行けばわかる、と。

面倒な仕事を振るために、嘘を吐いたのか。
そうすれば好奇心からその仕事を受けるだろうと…。

 

「お礼ははずむわ」
美里が言った。

「条件面は後で、ということにしましょう。まずはそのホームページを…」

「そのかわり、失敗したら死んでもらうわ
美里がこちらの話を遮るように付け加えた。

何をもって失敗やと言うんです?
咄嗟に聞き返した。

視線が絡んだ。

美里がこちらを射すくめるように真っ直ぐ見ていた。

ミソジは目を逸らさなかった。
もしかしたら、逸らせなかったのかもしれない。

 

「合格、よ。合格
美里が口元だけで笑った。
「せやけど、死んでもらうって言うたのは嘘とちゃう」

「こちらも嘘やとは思ってませんよ」
ミソジは声を抑えて言った。

「おかしな人ね、あなた」
美里が口元に手をやって笑った。

目尻に深いシワが寄った。

 

続き【ウェブ狼 第四話 ~奴との勝負~】を見に行く

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