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ウェブ狼 第十七話 ~来訪~

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人物相関図(クリックでポップアップ)

その二人が訪ねてきたのは、朝7時を過ぎた頃だった。

来客を告げるチャイムが鳴ったとき、ミソジは既に起きていて、自室で仕事の書類に目を通そうと考えていたときだった。

眠っている妻と息子を起こさないよう、ミソジはすぐにリビングへ向かった。

 

インターホンカメラの画面に映っていたのは、スーツを着た二人組の男だった。

若く、背が高い方の男が険しい表情を浮かべていたのが気になった。

「はい」

ミソジはインターホンの受話器を取り上げて言った。

『おはようございます。大阪府警の者です。朝早く申し訳ありませんが、二、三お伺いしたいことがありまして』

髪を短く刈り込んだ、年長の方の男がにこやかに言った。

「何の件ですか」

『お話は、中でさせてもらった方がええ思います』

穏やかな口調だったが、有無を言わせない響きが感じ取れた。

「失礼ですが、本当に警察の方ですか」

『大阪府警刑事部捜査一課の雨田寅彦です。こっちは同じく捜査一課の戸根です』

雨田と名乗った四十がらみの男が、警察手帳を開いて顔の横に掲げた。

バッジと身分証が見てとれた。

「わかりました。でも、小さな子供がいるので、自宅ではちょっと。場所を変えてもいいですか」

『ええ、構いません。すぐに出て来られますか』

「着替えだけ済ませて…、そうですね、五分くらいお待ちいただけますか」

『わかりました、ありがとうございます』

ミソジはインターホンの受話器を置いた。

手早く私服に着替えながら、思考を巡らせる。

十中八九、あの件で間違いないと思った。

 

弓森由利子が殺された件だ。

 

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「ここのマスターが作るモーニングセットが、近所の人に評判なんですよ」

喫茶店『ボヘミアン・ラプソディ』の奥にあるボックス席に腰を据えて、ミソジは言った。

朝早いからか、まだ他の客はいなかった。

「ほう、そうですか」

雨田がにこやかな表情で言った。

「いかがですか」

「いえいえ、我々は職務中ですので、結構です。どうぞ召し上がってください」

「では、遠慮なく」

注文を取りに来た口髭のマスターに、ミソジはモーニングを頼んだ。

刑事二人はホットコーヒーを注文した。

 

「早速ですが、御堂筋さん。弓森由利子さんをご存知ですね?」

マスターがカウンター内に戻るのを待って、雨田が手帳とペンを取り出した。

「直接、お会いしたのは一度きりですが」

ミソジは頷いた。

「弓森さんは亡くなりました」

雨田が低い声で言って、すぐに続けた。

「ご存知ですか」

「ええ、知ってます」

ミソジは再度頷く。

「どこで聞きはりました?」

「箕面市の酒井さんのお宅です」

「その酒井さんとは、どこでお知り合いに?」

「知人からの紹介で、仕事をもらいました」

「具体的に、どういうお仕事かお聞かせ願えますか」

雨田に促され、仕事内容を端的に説明した。

途中、いくつか専門用語に関する質問が入り、それについて答えた。

その最中、モーニングセットが運ばれてきた。

厚めの卵焼きを挟んだ『ふわふわたまごサンド』と付け合わせのサラダ、コーヒーのセットだ。

ミソジはコーヒーを一口すすり、説明を続けた。

 

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「……なるほど、大体把握しました」

雨田が手帳に何事か書き込みながら言った。

「食べても?」

ミソジはたまごサンドを指差した。

「どうぞどうぞ」

雨田が、ボールペンを挟んだ右手を前に差し出して言った。

「ところで、御堂筋さん。先ほどお知り合いの紹介で酒井さんの仕事を引き受けた言わはりましたね」

「ええ」

口に含んだ卵焼きの感触を味わう暇もなく返事をした。

「具体的には、どなたからですか」

杉成就という男です」

「杉、ですね?」

そう言った雨田が横を向き、隣りの戸根と視線を合わせた。

「杉が、何か?」

「我々が調べたところ、杉は殺された弓森さんと親しかったようです。ご存知でしたか」

「今、『殺された』とおっしゃいましたよね」

「言うたかもしれませんな」

「言いましたよ。それは間違いないんですか。いわゆる『他殺』ということで」

質問してるのはこっちや。あんたは答えてたらええねん」

それまで黙っていた戸根が言った。

視線が絡む。

束の間、にらみ合う格好となった。

「戸根」

雨田が低く言って、戸根を視線で押さえた。

「すみませんね、こいつはちょっと血の気が多くて」

「いえ」

ミソジは戸根から視線を外し、たまごサンドを口に放り込んで、コーヒーで流し込んだ。

「そろそろ出社の時間です。行っても構いませんか」

ミソジは腕時計に視線を落として言った。

「残念です。もう少しお時間いただきたいんですが、ね」

「そう言われましても、もう知ってることは話しましたよ」

ミソジは立ち上がり、伝票をつかんだ。

「ああ、それは私が」

雨田が言って、伝票に手を伸ばそうとする。

「そういうわけにはいきません」

ミソジはそれをかわして、レジへ向かった。

 

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