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ウェブ狼 第三十四話 ~反転攻勢~

高速道路の高架下
By: Jakob Montrasio

ウェブ狼 目次はコチラ

前回(ウェブ狼 第三十三話 ~落下~)はコチラ

人物相関図(クリックでポップアップ)

 

「で、どうすんねん?」

小山が、ミソジと杉を等分に見て言った。

「すぐにでも動き出したい」

ミソジは言った。

「そうか、わかった」

小山が立ち上がった。

「お? どうすんだ?」

「もう犯人はわかってるんやろ? 大将」

「そうだ。弓森由利子の次男、栄治で間違いない」

「そいつは、どこに?」

ミソジは言った。

「神戸だ」

「どっちにしろ、車がいるな」

小山がそう言って、部屋を出ようとする。

「どないした? もう行くんやろ?」

「車、貸してくれるんか」

「玄関で待ってろ。回してくるから」

 

屋外に出た瞬間、日光がやけにまぶしく感じられた。

昨夜、ほとんど寝ていないせいろう。

そう思うと、身体が異常に重く感じられた。

「おい、ミソジ。スマホ貸してみろ」

杉がそう言って、手を差し出してきた。

「なんでや?」

「いいから貸せって」

「理由を言えよ」

「念のため、盗聴されてないか確かめるんだ」

杉が真剣な顔をしていた。

「どうやって?」

ミソジはジャケットの内ポケットからスマホを取り出した。

「それは秘密だ。知らない方がいい」

「教えろよ」

「チェックが終わったらな」

半ば強引に、取り上げられた。

 

杉がスマホの画面を触り、何度かタッチした。

「大丈夫みたいだな」

杉がスマホをこちらに差し出す。

「えらいあっさりした調査やな」

「ああ」

「携帯電話をどうやって盗聴すんねん?」

「厳密に言うと、スマホでの会話を盗聴するんじゃねえんだ」

「っていうのは?」

「まあ、詳しいことはいい。とにかく、あるアプリを入れんだよ」

「アプリ? どんな?」

「それは秘密だ」

「おい」

そう言って杉に詰め寄ろうとしたとき、小山の声が聞こえた。

「なにをジャレてんねん。用意できたで」

小山が門柱から顔だけ出して言った。

「お」

杉が小走りで門を抜けて外へ出た。

それに続いたミソジの目に飛び込んできたのは、一台のハイエースだった。

「おい、小山…」

「みなまで言うな、トシ」

「これに乗れんのか」

杉が目を輝かせた。

それは、深緑色に塗装されたハイエースだった。

ボディの横に

『亜細亜大同団結青年同盟』

と白文字で大書されていて、屋根には大きなスピーカーが四つもついていた。

 

「今、これしかないねん。若い衆が他の車を現場で使っててな」

「せやいうてもやな、おまえ」

「まあ、細かいことは気にすんな。まさか警察も、街宣車におまえらが乗ってるとは思わへんやろ」

「そら、そうやけど」

「俺は気に入ったぜ。この色がいいじゃねえか。オリーブドラブって言うんだろ?」

「ああ」

杉の言葉に、小山が頷いた。

「いや、問題はそこちゃうねん」

「これ、軍歌流せんのか? 小山っち」

「流そうと思ったら。ウチではあまりやらんけど」

「だってよ、ミソジ」

「やらへんわ」

ミソジは言下に否定し、小山を見た。

「なあ、小山」

「これが嫌なら、あれを貸してもええで」

小山が、家の斜め前にある駐車場の一角を指差した。

そこには、同じように塗装されたマイクロバスが停められていた。

 

 

「ところで、いくらもらう予定なんだ? カードキーを見つけ出したら」

杉が前を見たまま言った。

 

今、杉が運転する『亜細亜大同団結青年同盟』と書かれたハイエースは、阪神高速3号神戸線を走っていた。

 

「何の話や」

ミソジは助手席で、シートを後ろに倒して目を閉じたまま言った。

「とぼけんな。タイゾウってやつの探偵事務所で言ってただろ」

「俺がカードキーを探してるって?」

ミソジは薄目を開けて、杉を見た。

「山分けしねえか?」

杉がこちらを一瞥して、すぐに視線を戻した。

「なぜそうなる?」

「当然じゃねえか。今、犯人の元に向かってるんだぜ? 誰の提案だよ?」

「犯人と決まったわけちゃうやろ。それに弓森栄治が持っているかもわからへん」

人物相関図(クリックでポップアップ)

「持っていたら?」

「俺がもらう」

「なんで、そうなるかね」

「あんたが持ってても、どうしようもない」

「だから言ってるだろ? 俺がカードキーを入手したら弓森邸に忍び込んで…」

「無理や。隆明がもう一つの鍵を持ってるいう話したやろ」

「だったら、奴を締め上げて奪うしかねえ」

「でけへんやろ、そんなの」

「わかんねえぞ」

「言うとくけど、それは犯罪やからな。強盗致傷と住居侵入で最低六年はくらう。六年やから、もちろん実刑やで」

「詳しいな」

「昔のツレがくらったからや。まだ塀の中にいてる」

「へえ」

杉がステアリングを操りながら続ける。

「ま、それはいいとして、俺が出した条件を受け入れねえんだったら、このまま帰るぞ」

「どこへ? 今、あんたが帰れる場所なんてないやろ」

ミソジはシートを起こしながら即答した。

助手席側の窓から入る日光がわずらわしく感じられた。

 

「言ってくれるねえ」

「あんたは、犯人を捕まえて警察に突き出す以外に、とれる選択肢はないはずや」

「仮にそうだとしても、今、この車でおまえを犯人の元へ連れて行くかどうかは別だろうが」

「そうかもな」

「いや、『かも』じゃない。俺の手助けがないと、おまえ一人ではどうにもならん」

「なんで、断言できんねん?」

「おまえだって妙な連中に狙われてるだろうが」

「だから?」

「一人じゃ何もできねえってことだ」

「あんたがいたら、どうにかできるってのか?」

「少なくとも、おまえ一人でいるよりは、な」

「どうだか」

ミソジは話を切り上げようと、目を閉じた。

 

「そもそもよ。おまえ、弓森隆明のこと、信用してんのか?」

「どういう意味や」

「奴がカードキーと引き換えに、金を払うと思ってんのか?」

「さあな」

「俺にはとてもそうには思えん」

「なぜ?」

ミソジは刮目して、杉を見た。

「あの男はケチ臭えからな。それに…」

「それに?」

「おまえに依頼しといて、別の連中も動かしている。しかも、その連中がおまえを脅す。信義も何もあったもんじゃねえな」

「信義、ね。あんたの口からそんな言葉が出てくるとは」

「バッカ。俺はこう見えて義理堅い男だぞ」

「そういうことにしとくよ」

「口の減らない野郎だ」

杉がやや減速しながら右へ車線変更した。

そして、生田川で高速を降りた。

 

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降り口の渋滞を抜けると、車の流れは良くなった。

昼下がりの神戸の街は、相変わらず人が多かった。

 

「ところで、俺も聞きたいことがあんねん」

「俺の好みの女のタイプか?」

「小山とどうやって繋がった?」

反問を無視して、ミソジは言った。

「話した通りだろうが。小山っちが俺を探し当てて…」

「そんなわけないやろ」

ミソジは途中で遮って言った。

「あんたを探してくれと小山に頼んでから、丸一日も経たずに見つかった」

「だから?」

「いくら小山の顔が広い言うても、話ができすぎや」

「ふん」

杉が鼻を鳴らして、口をひん曲げた。

「おまえはどう思うねん? ミソジ」

「手段も目的もわからんけど、少なくともあんた自身に『見つかろう』という意思があったとしか思われへん」

「かはっ」

杉が大口を開けて吹き出した。

「見事な推理だな、ミソジ」

ひとしきり笑った後で、杉が言った。

「やっぱり、そうか」

「俺も援軍が欲しかったもんでな」

「だったら、連絡寄越せよ」

「そうしようとしたんだが、な」

「いつ?」

「一週間くらい前か。おまえ、尾行されただろ?」

「尾行?」

「上本町にある、でけぇ病院からの帰り。千日前から四つ橋筋の途中まで」

「あ、あった。まさか…」

ウェブ狼 第二十話 ~背後からの脅威~

「あれは俺だ」

黒のハリアー。あんたの車か」

「前に愛車の話をしたことがあったから、気づくかと思ったんだけどよ」

「気づいてたら何だったんだ」

杉が交差点の手前で十分に減速して、ハンドルを切った。

「話がしたかったからに決まってるだろうが」

「そんなん電話したら済むやないか」

「盗聴されてるかもしれねえのに、か?」

「携帯電話の盗聴は技術的に結構、難度が高いはず。携帯会社ならできるやろうけど」

「スマホに入ってるアプリは調べたか? 車の中は? 持ち物を全部チェックしたか?」

「いや」

「そうだろ? 普通はそこまでしねぇからな」

「でも、誰が盗聴なんかするねん?」

「そりゃ、俺を捕まえたがってる連中だろうが」

「まさか、警察が? そんな捜査方法は…」

「ああ、違法だ」

「だったら…」

「だけど、連中がそれをやらないとは限らねえ。その音声を証拠として使えなくても、だ」

杉がブレーキを踏んで、車が停まった。

目の前の信号が赤だった。

「話を戻すけど、よ。小山っちの顔が広いのは本当だぜ」

「そんなに、か?」

「俺が唯一、連絡とってた奴にも、おまえが俺を探しているって話が伝わってきたからな」

「あんたが、連絡をとってた奴とは?」

「ちっ、やべえな」

杉が舌打ちをした。

車は高架下に差し掛かったところだった。

「どないしたんや?」

「検問だ」

 

 

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