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ウェブ狼 第二十話 ~背後からの脅威~

黒いSUV車 
By: Murray Barnes

ウェブ狼 目次はコチラ

前回(ウェブ狼 第十九話 ~密室~)はコチラ

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消毒薬の匂い。

白で統一された室内。

自分がこんなところに閉じ込められたら、一日と経たず、脱出を試みるだろう。

ミソジはベッド越しに窓の外を見ながら、そう思った。

昼下がりの陽光が部屋に注いでいた。

 

「で、トシちゃんが疑われてんの?」

タイゾウの声で、物思いから現実に戻った。

頭に包帯を巻いたタイゾウが上半身を起こしていた。

「いや、まあ、俺が直接ってわけちゃうな。ただ、共犯いうか、そんな感じでは思われてるんかもな」

ミソジは遅まきながらタイゾウの見舞いに来ていた。

足の骨にヒビが入っている以外は軽傷と言えなくもないが、頭を打ったので検査も兼ねて入院させられたらしい。

「警察は疑うのが仕事だから。あんま気にすることないよ、多分」

腕を上げようとしたタイゾウが、顔をしかめた。

 

タイゾウは酒井家を探っていて、ハリーことアンディ・ジョーンズに怪我を負わされていた。

一度、警告を受けていたにもかかわらず、酒井家に近づいたのはタイゾウの慢心、不注意のせいだ。

とはいえ、責任の一端は雇い主の自分にもあると、ミソジは考えていた。

だからというわけではないが、追加料金を払ってタイゾウを個室に入れていた。

 

「知った風な口叩くなよ」

ミソジはタイゾウの左腕を小突いた。

「痛っ。そこ、ケガ‥‥」

「なあ、タイゾウ」

ミソジは気づかないふりして言った。

「おまえ、警察に知り合いおらへんか?」

「え?」

「事件の情報流してくれそうな。弓森由利子が殺された件の」

「いるっちゃいるけど」

「けど?」

「金がいるね。情報料」

タイゾウが笑顔で言った。

「前の仕事で、多めに払ってるはずや。そこから出しといてくれや」

「えぇ~、そら殺生やで、トシちゃん」

「けったいな関西弁使うな。これで何とかしろ」

ミソジは一万円を差し出した。

「あと二枚」

タイゾウが札を受け取りながら言った。

「なんでや」

「情報料は三万円って決まってるんだって」

「誰が決めたんや、そんなん」

ミソジは一万円を二枚札入れから出して、ベッドに放った。

「領収書いるからな」

「退院したら、発行するよ」

タイゾウが笑顔を見せた。

 

 

病院内の駐車場に停めた車に戻り、ミソジはスマホを手にした。

電話帳から探し、電話をかける。

3コールで、瞳が出た。

『珍しいですね、先輩が電話してくるなんて』

「そうか」

左手でシートベルトを引っ張り、装着した。

 

『いつもはメールじゃないですかぁ。しかも内容は書かずに会ってから話すって』

「メールは第三者に見られているからな」

『あたしたちはそんな重要人物じゃないですよ』

瞳の笑い声が聞こえた。

「一般人のメールでも検閲単語に引っかかったら、そのメールはアメリカに筒抜けや」

『なんですか、その話。面白そう』

「いや、これは別の話や。テロリスト云々の。でな…」

ミソジはキーを取り出し、車のエンジンをかけた。

『はい』

「こないだの酒井さんからの仕事の依頼」

『受けるんですね』

「先に言うな。まあ、ええわ。そういうことやから」

ミソジはハンドルを切りながらアクセルを踏んだ。

駐車場の中を徐行する。

 

『どうしたんですか、急に』

「うちの奥方に話したら、そう言われてな」

『どう言われたんですか』

「『その仕事やってみたいんやろ?』って」

『図星だったんですね』

「そうや」

左右を確認し、駐車場を出た。

『先輩は引け目を感じたんですよね、ずっとほったらかしにしてるから』

「ありていに言えば、そうなる」

『良い奥さんですね』

瞳が大きな声を出した。

「否定はせぇへんよ」

『じゃあ、その件について…』

「次、会ったときに詳細は詰めよう。また連絡する」

ミソジは返事を待たずに、電話を切った。

スマホを助手席に放り、短く息を吐いた。

今から一仕事する必要があった。

 

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尾行されているのではないかと疑念を抱いていた。

自宅から病院までの道のりで、そう感じた。

相手方の車をしっかりと確認できたわけではない。

しかし、同じ車体、同じ色の車がバックミラー越しに何度か視界に入った。

 

普段なら気にも留めなかっただろう。

第六感というか、虫の知らせと言ってもいい。

なぜか、その車が気になった。

 

こういうことに慣れていない自分に気づかれるということは、尾行が下手なのか。

それとも、尾行していることをこちらに知らせようとしているのか。

だとしたら、一体誰が、どんな理由で?

堂々巡りで、答えが出るはずもない問いだった。

ミソジは思考を中断し、バックミラーを見た。

まだ、それらしき車は映っていない。

 

千日前通に合流した。

西日が眩しかった。

サンバイザーを下ろす。

土曜日の夕方、交通量はいつもと変わらず多い。

難波方面へ向かう車列に加わり、ゆっくりとマークⅡを進めた。

時折、視線だけ動かしてバックミラーを確かめる。

 

阪神高速の高架下に差し掛かろうとしたときだった。

車線変更して、こちらの二台後ろについた黒い車体のSUV。

あれだ、とミソジは思った。

運転手の顔までは判別できなかった。

運転席に一人、助手席は空。

とはいえ、尾行が一人だとは限らない。

後部座席に誰かいるかもしれないし、そもそも一台だとは限らない。

ミソジは自分の肩や腕に力が入るのがわかった。

 

やめようとは思っても、勝手に思考が巡る。

 

尾行者は何の目的で、自分を追っているのか。

偏見かもしれないが、SUVということは警察車両ではないような気がする。

というより、警察なら素人に気づかれるようなヘマはしないだろう。

だとすれば、誰が?

 

ミソジは難波の交差点を通り過ぎ、湊町ミナミ交差点手前で右折レーンに入った。

あれが本当に尾行者の乗った車なのか確かめる必要がある。

そう思った。

前の車に合わせてブレーキを軽く踏み、視線をバックミラーにやる。

二台後ろで黒いSUVがウィンカーを右に出し、車線変更をした。

しかし、ミソジの真後ろを走っていたミニバンも右折レーンに入ったため、こちらからSUVの運転席を見ることができなかった。

舌打ちをし、ミソジは信号待ちをした。

 

ややあって矢印信号が右折を許可した。

ミソジはマークⅡを四つ橋筋へと進めた。

なんばHatchを左に見ながら走り抜ける。

ミソジはウィンカーを出し、左側に車線変更をした。

遅れて、黒のSUVが同じ動きをする。

 

少し進んだところで、今度は右側の車線に戻ってみた。

バックミラー内のSUVがついてくる。

心臓が早鐘を打った。

 

SUVの動きは露骨だった。

それは自分に対するメッセージなのではないか。

ミソジはそう思った。

とはいえ、相手が誰なのか、自分が何をしたのか見当がつかないのでは、その意図を汲み取りようがない。

 

運転手の顔を見れば、何かわかるかもしれない。

そう考えたが、運の悪いことに車の流れが悪くなりつつあった。

いつものことだが、四つ橋筋はこの辺りから混雑し始める。

アクセルを緩め、車間距離をとる。

 

次にどうするか、どの道筋を通ってどこまで行くか。

バックミラーを見ながら考えを練ろうとしたとき、黒のSUVが車列を外れ、右折レーンに入った。

中央大通と交わる大きな交差点だった。

ミソジはそのまま車を直進させた。

サイドミラーに映る黒いSUVが、古い型のハリアーだということが辛うじてわかった。

その姿が徐々に遠のいていった。

遠いせいで、ナンバーまでは確認できなかった。

 

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