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ウェブ狼 第十話 ~企画室にて~

バーの店内
By: Danny Ryder

ウェブ狼 目次はコチラ

前回(ウェブ狼 第九話 ~予期せぬ再会~)はコチラ

 

絞った音量で店内に流れるスイングジャズ。

グレン・ミラー・オーケストラの『Don’t sit under the apple tree』。

いつもの『BAR SEO』だった。

カウンターの向こう側で、菅田元(すがたはじめ)がグラスに酒を注いでいた。

客は男が一人。

何度か見かけたことがある常連客だ。

 

「元さん。『企画室』、空いてますか?」

ミソジはカウンターに近づいてそう言った。

菅田が眼光鋭くこちらを見た。

その視線はミソジの背後に注がれていた。

彼女はそんなんとちゃいます。俺の後輩。うちの会社でマーケティングを担当してる子ですわ」

ミソジは早口で短く説明した。

「そない長くはかからんと思う。空いてるなら使わせてほしんですけど」

菅田が肩をすくめ、顎をしゃくって企画室を指し示した。

ミソジは頷いて、店の奥へ進んだ。

 

 

トイレの向かい側にあるドアを開けて、『企画室』に入る。

 

広さは六畳程度。

照明が抑えられた店舗部分と違い、この『企画室』は明るかった。

部屋の中央に、樫の一枚板で作られた大きなテーブルが据えられている。

テーブルはミソジの腹程度の高さがあるが、それで良かった。

この部屋には椅子がないため、立ったまま話す必要があるからだ。

 

ミソジはバッグを床に置き、テーブルに肘を掛けた。

「先輩、『そんなんとちゃいます』ってどういう意味ですか」

隣りに立った瞳がこちらを向いて言った。

「何の話や?」

「さっき、店に入ってきたときに言いました。あのバーテンさん、あたしをにらんでたみたいですし」

「そんなとこに引っかからんでも」

「気になるじゃないですか。居心地が悪いっていうか」

瞳が考え込むような表情を見せた。

「この店で女性を見たことがない

ミソジは言った。

「どういうことです?」

「詳しくは知らんけど、そういう雰囲気ちゃうねん」

「そういうって?」

女を口説くときに使う店とちゃう。そういうことらしい」

「誰が決めたんです、そんなこと」

「さあね。俺も杉からそれとなく聞かされただけやし。でも、確かオーナーの方針ちゃうかったかな」

「変わってますね」

「そうやな。会員制ちゃうけど、来る客はほとんど馴染み客みたいやし。しかもほぼ全員、マーケティング業界の連中ばかり」

「珍しいお店ですね。先輩はいつ頃から?」

「二年くらい前かな」
ミソジはそう答えて、続けた。
「そんなことより、仕事の話を。PCは?」

「持ってます」

「店のWi-Fiが入るからネットに繋いでくれ」

「はい」

瞳がすぐにセットアップを済ませた。

 

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「まず、今回、俺が受けてる案件の説明をする」

「はい」
瞳がいつになく真剣な顔でこちらを見つめてきた。

「目的は、箕面にあるカフェのウェブサイトのアクセスアップ」

ミソジはURLを伝えた。

瞳が『ライフペイジ』のホームページを開いた。

 

「なかなか、ですね。このサイト」

瞳がカーソルを動かし、サイトを回遊しながら言った。

「素人が本を見ながら作ったらしいからな。仕方ない」

「で、これをどうするんです? サイト制作からやるんですか?」

「俺がやる。WordPressを使って、サイト構成は変えずに見た目だけ整えようと思ってる。SEOのことを考えても、今よりはマシになるはず」

「でしょうね。でも、先輩。ちょっと気になったんですけど」

「なんや」

「目的はアクセスアップですか? 問い合わせとかサイト内での商品購入じゃなく? それからこのサイトの現在のパフォーマンスはどんなもんです? そこからどれくらい上げればいいんです?」

「さすがに、気づくよな。そこに」

ミソジは頷き、これまでの経緯を説明した。

酒井美里のこと、彼女がどんな意図を持って自分に仕事を依頼してきたか、について。

そして、最後にハリーこと、アンディ・ジョーンズのことも話した。

 

「じゃあ、さっきの変な服の男もそこの? でも、だったらなんで先輩を襲うんですか。依頼主側の人でしょう?」

やきもち、かな」
ふと思いついて、ミソジは言った。

「やきもち?」

「あいつは酒井美里のことを母親のように、いや、もしかしたら恋人のように思ってるんちゃうかな」

「だから、先輩を襲う? おかしな話ですよ。依頼主と先輩は仕事上の関係なのに」

「その辺は俺にもわからへん。外国人やからな、相手は」

「差別発言ですよ、それ」

「そんなつもりはない。ただ、文化の違いからくる誤解かもしれんなと思っただけや」

「とにかく、気をつけてくださいね。ところで、先輩」

「ん?」

「具体的にはどうするつもりです。このサイトのアクセスアップ」

「ああ、それな…」

 

続き【ウェブ狼 第十一話 ~会議は踊る、されど芽生えず~】を見に行く

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