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ウェブ狼 第九話 ~予期せぬ再会~

大阪、道頓堀の水面に映るグリコマーク

By: sookie

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前回(ウェブ狼 第八話 ~調査、素顔~)はコチラ

大阪、日本橋。

ミソジは堺筋を北へ歩いていた。

堺筋の西と東では景色が変わる。

東側はマンションが増え、夜は人通りが少ない。

そちらに向かって、道を曲がった。

一方通行の狭い道だ。

 

角から人影が現れた。

濃い緑色のスーツを着た体格の良い男だった。

男の意識がこちらを向いている。

それがミソジにはわかった。

自然と重心が後ろにかかった。

「よう、久しぶりだな」
街灯を背にしているので顔が見えづらかったが、声と言葉の訛りでわかった。

 

アンディ・ジョーンズ。

酒井美里の屋敷でハリーと呼ばれていた男だ。

「なんの用や」
短く言った。

「ご挨拶だな」
アンディが妙な抑揚をつけて言い、続ける。
「日本人はこういうとき、そう言うんだろ?」

「しょうもないドラマの見すぎやぞ、ハリーちゃん

「てめぇ」
アンディの顔色が変わった。

酒井美里以外の人間からハリーと呼ばれることが癇に障るらしい。

「化けの皮が剥がれるのが早いな」
ミソジは早口で言い、続ける。
「こういうとき、そう言うねん、日本人は」

「ハッ」
アンディが息を荒く吐いた。

「ほんで、ダサい服でおめかしして何しに来たんや、こないなところまで。はよ箕面の山奥に帰れや」
ミソジはわざと軽い口調で言った。

 

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アンディが頭をゆっくりと右側に倒した。

奇妙な動きだった。

「あの小さいの、ボコっといたぜ」

「誰のことだ」

「おまえのオトモダチの、のぞき魔だ。探偵だとか言ってたな、自分のこと」
アンディがそう言って頭の位置を戻し、鼻で笑った。

「大山泰造のことか」
小さな探偵といえば、タイゾウしか心当たりがなかった。

「大山ってのか、あいつ。性懲りもなく奥様を嗅ぎまわってたから、しっかり痛めつけてやったぜ」

わざとらしいゆっくりとした喋り方で続ける。

「めそめそ泣きやがって、みっともねぇったらなかったぜ。オマエが雇ったんだってな。すぐに吐きやがった」

 

目の前が一瞬、白くなるほどの怒り。

 

次の刹那、体が勝手に動いた。

が、アンディの姿はそこになかった。

コンマ数秒遅れて、腰の辺りに強い衝撃。

 

タックル。

そう気づいたのは体が宙に浮いてからだった。

アスファルトに背中から叩きつけられた。

痛みを感じる間はなかった。

体を起こしたアンディの胴回りを自分の両脚で挟んだ。

上に乗られたらアウトだ。

本能がそう告げていた。

 

街灯を背にしたアンディが不敵な笑みを浮かべた。

来る。

そう思った瞬間、拳が振り下ろされた。

反射的にかわす。

頬をかすめた。

鈍い音が耳元で聞こえた。

「グッ」
アンディが苦痛に顔を歪めた。

振り下ろした拳がアスファルトを打った。

気がそれた。

そう思い、脱出を試みる。

足の裏でアンディの胴を蹴り、逃げようとした。

が、アンディが距離を詰めたので、状況は変わらなかった。

 

次の攻撃は気配でわかった。

さっきとは逆の拳。

顔に来ると見せかけ、腹を打った。

「グアッ」
ガードできなかった。

悶絶しかけたが、耐えた。

更にもう一発。今度の狙いは顔だった。

両腕で守った。

が、その隙間から拳が割り込んできた。

喉と鎖骨辺りに当たった。

 

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と、悲鳴が聞こえた。

女の声。

「誰か来て。助けて」

声が辺りに響いた。

アンディが舌打ちをした。

強引に脚を振りほどいて、立ち上がる。

束の間、こちらを見下ろして、走り去った。

 

ミソジは起き上がろうとして、盛大に咳き込んだ。

地面に手をつき、四つん這いの姿勢で唾を吐いた。

先輩、大丈夫ですか」
聞いたことのある声だった。

顔を上げる。

新田瞳がいた。

「なんや、おまえか。何してる?」

「なんですか、その言い方。あたしは命の恩人ですよ」

「命の恩人は言いすぎや」

「助けたことには変わりありません」

「せやな。恩に着る。いや、ありがとう」
ミソジは立ち上がった。

 

殴られた箇所と地面に叩き付けられた背中が痛む。

「もう大丈夫だと思います。さっきの男は向こうに走り去って……」

「ここで、何してる?」
ミソジは言った。

「何って……。さっきそこで迷ってしまって」

「俺の後をつけてたんか? さては、ストーカーやな」
軽口を叩いたが、喉が痛んだ。

再び咳き込む。

瞳が背中をさすってくれた。

「人を犯罪者みたいに。後をつけたのは今日が初めてです」

「この前を含めたら二回目やけどな」

「それは……、たまたまです」

「で、どうした? 何か用か」
息を整え、ミソジは訊いた。

「『どうした?』って何ですか、先輩。仕事を手伝わせるって言っといて、音沙汰なくて」

「思ってたより、せっかちやな。新田」

「先輩が連絡くれないのが悪いんです。こっちは何もわからなくて、不安になるじゃないですか」
瞳がなじるような口調で言った。

「俺には一つわかったことがある」

「なんですか」

「俺の弱点はグラウンドでの寝技や。時間ができたら習いに行かんとな」

「何の話をしてるんですか」

「わからなくていい」

「あのねぇ、先輩」
瞳がこちらに向かって一歩踏み出した。

「わかってる。これから説明する」

ミソジは『BAR SEO』を指差した。

 

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