35deFA

ハードボイルドなブログ小説家が綴る雑多ブログ

よく見られている記事

アンドロイドスマホ
910207

【Android】アンドロイドスマホの電源が入らないときに試したい4つの方法

ちょっと前までは動いていたのに、突然動かなくなった。 何が原因かさっぱりわからない。 スマホに限らず家電なんかでも、そういうことがありますよね。 下手に触って余計なダメージを与えたくない。 でも電話が使えない、ネットにもつながらないなんて困...

ウェブ狼 第二十三話 ~受諾~

okを意味する手の形
By: sylvar

ウェブ狼 目次はコチラ

前回(ウェブ狼 第二十二話 ~思いがけない依頼~)はコチラ

人物相関図(クリックでポップアップ)

 

「なぜ私が杉成就を捜さなければならないんです?」

ミソジは言った。

「それは、拒否してるってことですか? それとも質問ですか?」

隆明がわずかに首を傾けて言った。

「両方です」

ミソジは即答した。

 

「隆明さん。まずは説明してあげた方がええわ」

美里がミソジと隆明を等分に見ながら言った。

「そうですね」

「納得せんと、御堂筋さんも動いてくれへんと思うし、?」

最後の問いかけはミソジに向けられたものだった。

 

「理由を説明されても、って気はしますが」

「まあ、聞くだけ聞いてみて」

美里が薄く笑みを浮かべて言った。

「ひとまず座りませんか。畳が嫌なら、そこにある椅子にでも」

言いながら隆明が上着を脱いで、黒いネクタイを緩めた。

「座りましょう」

そう言ったときには、美里は既に腰を下ろしていた。

ミソジはコーヒーテーブルを挟んで美里と向かい合った。

その斜め奥に弓森隆明がいるという格好だ。

 

「そもそも杉成就を追ってくれと頼むのは…」

奴が行方をくらましたからですよね。もしくは逃げたというべきか」

ミソジは隆明の言葉を遮って言った。

「よくご存知で」

「もしかして、あなたのところにも警察が?」

美里が言った。

「ええ」

「なら、話は早い。その話には続きがありましてね…」

隆明がこちらを向いたまま畳に寝転がり、肘を突いて右手で頭を支えた。

緩慢な動きだった。

「それだけのことなら、我々が奴を追うこともない。警察に任せとけば、そのうち捕まる。せやけど、ね…」

「何です?」

言葉が思わず口を突いて出た。

興味を持ったわけではない。

もったいぶった言い方に苛立っただけだと自分に言い聞かせた。

こちらの心の動きを読むように、隆明が口の端を歪めて笑った。

「杉って男はなかなかの悪党でね。あるものを母から盗んで逃げとるんですわ」

「あるもの、とは?」

 

 

カードキーよ」

美里が横から言った。

「カードキー?」

「そう」

「部屋に入る?」

ミソジの問いかけに隆明が口を開く。

「必要な鍵のうちの一つがカードキーでね。もう一つは俺が持ってます」

隆明がキーケース内の一つの鍵を、自分の顔の前に掲げて見せた。

「この鍵とカードキーで施錠を解かんと『そこ』に入れへんわけですわ」

そこっていうのは、どこかの部屋ですか?」

「一階の廊下を奥まで行くと、そこに地下室への扉がある。そこの鍵がこれ。階段を下ったところにある扉を開けるのに必要なのが…」

「杉成就が持っているカードキー?」

「そういうこと」

隆明が口元だけで笑って頷いた。

「元々は親父が持ってたんですが、母親の管理に代わって。親父は病気の後遺症で寝たきりで。もう二年近くになるんかな」

 

スポンサーリンク

 

「というわけやねん。御堂筋さん、引き受けてくれはる?」

美里が言った。

少しの沈黙の後、ミソジは言った。

「引き受けるかどうかは別として、二つ疑問があります。一つは、ドアはカードキーなしで開けられないかということ。つまりドアは壊せないのかということです」

美里と隆明を等分に見ながら、ミソジは続けた。

もう一つの疑問は、なぜ杉成就が盗んだことを知っているのかってことです。他の誰かかもしれない」

ミソジは、わざと『盗んだ』という言葉を使った。

 

美里が肩越しに振り返って隆明を見た。

「本来、答える義務はないが、あんたは納得行かへんことには腰を上げない性格みたいやし、特別や」

隆明が片眉を上げて言った。

口調がぞんざいになっていた。

 

一つ目の質問は、YES。やろうと思えばドアを壊せる。せやけど、意味がない」

「どうして、です?」

カードキーはドアの開錠以外にも使うから」

「ドア以外?」

「部屋の中に鍵をかけて守らなあかんもんがある。それ以上は察してくれや」

鍵をかけて守る必要のあるものが、豪邸の地下室にある。

それはカードキーを使って開ける。

自ずと答えは出た。

 

もう一つの答え。杉成就が持って行ったに違いないと俺は考えてる。なぜならあいつは最初から金目当てで、俺の母親に近づいたからや」

「なぜそう言い切れるんです?」

「あいつが何歳か知ってるか?」

「正確には知りませんが、三十後半やと…」

「2015年10月現在で37歳。それに対して俺の母親は61歳やった。これが金目当てでなくて何や?」

隆明が語調を強めた。

 

「あの男は女性と見たら見境がないみたいですし…」

「それで説明がつかへんから言うてるんですわ。あの男を調べたらすぐにわかる」

「私は杉のことを詳しく知ってるわけちゃいますからね。まあ、知りたくもないんですが」

ミソジは言った。

「あなたもそうかしら?」

美里がいたずらっぽく笑った。

「どういうことです?」

「金目当てで、あたしに近づいたのかってこと」

「俺はそんな気は…、ないと言うたら嘘になりますけど」

「正直な人やね。あなたのそういうとこ好きよ」

「でも、仕事はちゃんとやってるつもりです」

「そこに疑問を挟むつもりはないわ」

美里が言った。

 

「それと、もう一つ聞きたいことが」

ミソジは言った。

「何ですか?」

隆明の言葉には苛立ちがこもっていた。

「いや、あなたではなく、酒井さんに、です」

ミソジは美里に向き直った。

「何やの?」

「今更ですが、なぜこの件に酒井さんが噛んでいるんです?

「噛んでいる? なんで参加してるかってこと?」

「そうです」

「おかしなことはないねんで。あたしは仲が悪かったとはいえ由利子の親友やったし、隆明さんはあたしの娘婿やし、それに…」

美里が言葉を途中で切った。

「構いませんよ、お義母さん」

隆明が言葉を投げかけた。

「ここの夫婦が問題を抱えてんねん。隆明さんとうちの娘が。あなたにコンサルを頼んだのもそのせい」

「ぶっちゃけて言うと、うちの会社の業績が悪いんですわ。それで妻と揉めてる」

続けて隆明が言った。

「そう。うちの娘は…、あなたも会ったからわかるやろ?」

「いえ、短い時間しか話してませんから」

勝ち気で頑固で融通がきかなくて、大変なんよ。隆明さんの苦労がわかるわ」

それはあなたの性格でもあるという言葉をミソジは呑み込んだ。

「まあ、それでわかった思いますけど、ね。カードキーが戻ってきたら、それなりの金が手に入るんですわ」

「でも、それこそ警察に任せておけば、そのうち…」

 

「そう、そこで話が戻って来る」

隆明が手を叩いた。

「どういうことです?」

「それは表に出されへん金やねん」

「つまり、脱税とかそういう…」

「まあ、そんなところかな」

「なるほど…」

「せやから、カードキーを取り返してくれたら、ボーナスをはずみますわ」

「いくらです?」

ミソジは問い返した。

500万円で、どうです?」

「捕まえられなかった場合は?」

ミソジは反問した。

「特に、何も。ただ、この件は…」

口外無用

「そういうことです」

隆明が言った。

 

「わかりました。引き受けましょう」

 

 

続き(ウェブ狼 第二十四話 ~the big man~)を見に行く

ウェブ狼 目次はコチラ

人物相関図(クリックでポップアップ)

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Return Top